「国語科なしの入試」が増える 大学入試国語と中学受験の関係【中学受験】

共通テストの国語の問題は、従来の読解力重視から、実社会での実用性を重視するような問題を取り入れることになりましたが、国語の専門家からは疑問の声があがっています。従来の、「読解力に特化した国語の問題」という伝統的な国語教育と、「国語以外の教科で国語力を問う」という新しい考え方の違いは何なのか? 
中学受験ではこの流れをどう読み解いたらいいのか、森上教育研究所がお伝えします。

国語科入試が減っている時代だからこそ、国語を深められる

共通テストの国語の問題は、深い読解に重きをおいてきた今までの流れを断ち切り、より実社会で使える読解の出題という方向に舵を切りました。
ところが、国語教育の専門家からすると、「問題のレベルが低すぎるのではないか」という声がほとんどです。

しかし、高校入試でも、従来は「国語科」として出題をしてきた問題を、今年の開成の入試のように社会や数学、理科で問うことが増えてきました。つまり、国語は総合教科で読解力を問うものなので、社会で問うても理科で問うてもいいという考え方です。
例えば、慶応大学入試には国語はありませんが、これは前述のように「国語の学力は数学と英語で十分に問うことができる」という考え方があるからです。

一方、東大をはじめとする伝統派は「国語科の試験は必要、しっかり読解力を養うべき」という立場を取っています。今後、目指す大学がどちらの立場を取るかという観点もありますが、「国語科なしの入試」が一つのありかたとして増えているのは事実です。
そうなると、中学高校では、「入試のための国語」といういわゆるテクニカルに偏った授業をしなくて済むので、国語が好きで深い読解をやりたいという生徒にとっては、好きなことを深められ、自由度が増すことになります。

少子化が進む首都圏で、今の小学校1年生が大学入試を迎える頃には、本当の難関大学でもかろうじて選抜試験の意味があるという程度で、真ん中より下の大学入試は、実質全入という時代が来ると思います。
そうなると、入試のためにする勉強ではく、ある程度自分で将来の展望を決めて、そのための勉強や体験を積んでいくことが重要になってきます。

AO入試は学校ではなく、プロジェクトで選ぶ時代に

そういう面では、どのような判断をして中学・高校を選ぶかという保護者のかたと受験生の考え方も、従来とは変わってくるでしょう。今までは出口の大学進学を重要視して学校を選んでいたのが、AO入試が増えると、時代に則した考え方が必要になってきそうです。
というのも、ある大学の教員に聞いたところ、「これからのAO入試で取りたい生徒は、〝学校〟を指定するのではなく、SGHなどのプロジェクトを指定して取りたい。SGHで学んできた生徒は、英語の資料も読めるし、プロジェクトの運営もでき、即戦力になるから、ぜひ受け入れたい」という話がありました。これは、教育のプロジェクト=質に関して信頼がある時代がくるという象徴的な話だと思います。

ですから、中高一貫校や高校にとっては、教育の質をどう設計するかがますます大切になってきます。従来は入試ありきで入試に向いた授業をしてきましたが、大学側としては、入試では共通テストで基礎的な学力を測るまでのもので、ほとんどは高校までの業績を重視するという方向にカーブを切ろうとしているからです。

中学受験では難関校を志望するかたが多いので、入試や勉強の質が変わった感じはあまりしないかと思います。ですが、主体的に勉強していくという意識をもち、なるべくいろいろなプロジェクトのある学校に入り、様々な体験を通して自分が面白いと思えるものと出会えることが大切です。
保護者のかたとしては、学校が開かれていく一方で、学校のみに依存せず、外部の検定を受けるなど、お子さまがいろいろなソースを持てるよう力を貸してあげられるといいですね。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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