学校選び・受験生活の送り方 『ベネッセ進学フェア2017』

2017年5月、東京国際フォーラムで、中学受験を検討している保護者のかたやご本人向けに『ベネッセ進学フェア2017』が開催されました。同フェアでは、中高一貫校約180校が一堂に会し、直接先生に質問することもできるほか、学校選びの相談ブースが設置され、専門家による講演会も開催されました。
今回はその中から、教育と受験全般に詳しい安田理氏による座談会の内容をお届けします。学校選びと中学受験生活の送り方について詳しくアドバイスしていただきました。

■わが子は中学受験向き? 高校受験向き?

よく保護者のかたから、中学受験をさせるか、公立中学に進んで高校受験をさせるかどうか迷っているというご相談を受けます。では、どんな子が中学受験に向いているのでしょうか。
一般に、精神的に幼い子の場合は、中学受験より高校受験のほうがよいと思います。「お父さん、お母さんにいわれて」勉強している、といった意識だと学習の成果も上がりません。
「自分のために勉強している」という自分の意思を持てる子のほうが伸びますし、確実に志望校に合格していくケースも多いようです。

■志望校は、最終的には本人の意思で決定を

中学受験をする場合、受験校の候補は保護者のかたが用意すべきですが、最終的にどこを受けるかの意思決定はお子さま本人にさせることが大切です。世間の評判や大学進学実績だけでなく、お子さま本人の「行きたい」という気持ちが動いたところを選ぶほうがよいですね。
せっかく中高一貫校に入っても、高校進学の段階で別の学校へ進む子も一定の割合でいます。いじめなどの人間関係のトラブルや学業不振が原因になることが多いようです。子どもに「親が決めた学校」という意識があると、小さなトラブルでも、すぐに挫折してしまうケースも多いのです。
お子さまが自分で選んだ学校なら、困難も乗り越えることができます。

■中学受験人口はなぜ増えている?

2015年以降、中学受験をする人は少しずつ増えています。その背景には、大学入試改革やグローバル化の影響があると思われます。
大学入試センター試験は、2020年から新テストに変わります。無駄のないカリキュラムを組める中高一貫校のほうが、新しい大学入試対策に有利と判断した保護者が多いと考えられます。また、新テストでは英語4技能が重視され、英検などの外部検定が活用される見通しです。中高一貫校はネイティブの教師がいることが多く、英語4技能の習得に有利と考えられることも理由のひとつでしょう。
今後は一層グローバル化が進み、海外の人と一緒に仕事をするケースがますます増えると考えられます。また、論理的思考力やコミュニケーション能力、ICT活用能力など、いわゆる21世紀型スキルの重要性も近年よく話題になります。「グローバル教育や21世紀型の教育は、中高一貫校のほうが進んでいる」。中学受験者の増加の背景には、保護者のそんな判断があるのではないでしょうか。

■入試のスタイル、入試問題の変化

これまで、中学入試といえば国語・算数の2教科か国算理社の4教科で、塾などに通って勉強する受験生が大部分でした。しかし、大学入試が思考力や表現力、判断力を重視する方向に変わってきたのを受けて、教科の枠を超え、様々なスタイルの入試を行う私立中高一貫校が増えてきました。適性検査型、思考力テスト、英語表現力入試、プレゼンテーション入試など名称も様々です。
その背景には、4教科の受験勉強をしっかり行ってきた子だけでなく、ずっとお稽古事やスポーツをやってきた子、英会話スクールに通っていた子など、様々な子どもに門戸を開こうという学校側の考え方があります。また、このような入試を行うことで、その学校が大学入試改革を見据えているというアピールにもなります。

入試問題そのものも変わってきています。
たとえば慶応湘南藤沢の国語では、「じゃんけん」を知らない人に、じゃんけんのやり方やルールを説明する文章を180字以内で書かせる問題が出題されました。また、かえつ有明の思考力入試では、病院の診察順が、電車の指定席や飛行機のファーストクラスのように、整理券の購入金額によって決まるとしたらどのような問題が生じるか、自分の考えを書かせる問題が出題されています。
このような問題は、ふだんから様々なことを考え、自分の考えを相手に伝える訓練ができていないと太刀打ちできません。机の上での学習だけでなく、日常生活の中で気づいたことをご家族と話し合う習慣が大切だと思います。

■変化の時代、中学入試とどう向き合うか

私は進学相談で、様々な保護者のかたと接する機会が多いのですが、どう中学入試と向き合うかは、各ご家庭の考え方次第だと思います。「これから、より不確実な時代になるからこそ最上位の難関大学に進んでほしい」というご家庭も多いですし、「鶏口となるも牛後となるなかれという言葉がありますが、たとえ『牛後』になっても居心地のよい学校がいいですね」「卒業後の道は、決して平坦ではないだろうから、どんな状況でもやっていけるだけのリテラシーを身につけさせたい」といった保護者のかたの言葉も印象的でした。
中学受験をするかどうか決める前に、お子さまにどんな大人になってほしいか、それをまず考えることが大切です。そこから受験生活の方向性が見えてくると思います。

■これからどう受験生活を送ればいいか?

保護者のかたも、ぜひ入試問題を見てください。入試問題には、学校が厳選し、生徒に読ませたい文章や題材が出題されていますから、大人にもとても勉強になります。今回、「中学受験そのものに意味があるのか」との質問もいただきましたが、意味は大いにあると思います。受験勉強を通して良い文章と出会えますし、日本や世界で起きている様々な問題と向き合うことができるのです。
ぜひ、お子さまと一緒に、日常生活の中で学び、考え、話し合う機会を大切にしていただきたいと思います。合否の結果だけでなく、そのような時間から得られるものは非常に大きいのではないでしょうか。

(筆者:安田 理)

プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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