どうする? 志望校 ~春休みこそ広い視野で検討を![中2生 高校受験]

いよいよ新学期から受験生…とはいっても、志望校について、まだあまり具体的に考えていないというお子さまも多いのではないでしょうか。近年、高等学校は多様化の方向に向かい、選択肢も多様化しています。今回は、この時期、お子さまと広い視野で検討していただきたい志望校選択についてお話しします。

公立高校の選択肢の広がり

近年は、多くの県で学区の撤廃が進み、志望校の選択肢が広がっています。また、都市部では交通網の発達により、以前なら通えなかった学校が通学圏内に入ってきています。そのため、近年起こっている現象が、たとえば東京都なら日比谷、神奈川県なら横浜翠嵐といったトップ校への受験生の集中です。一方で、それ以外の高校も様々な取り組みにより、特色を出そうとしています。進学指導重点校、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)、スーパーグローバルハイスクール(SGH)など、文部科学省による指定校のほか、ICT教育、福祉教育、部活動など、力を入れている分野によって、県の指定を受けている高校もあります。

たとえば、お子さまが英語や国際理解に興味があるなら、ぜひこの機会に、お子さまと一緒に、お住まいの都道府県ではどこがSGHに指定されているか、ぜひ教育委員会のホームページなどで調べてみてはいかがでしょうか。

カリキュラムや学科の多様化——公立高校から医学部を目指すコースも

カリキュラムや学科も多様化しています。より柔軟なカリキュラムを組める単位制をとる学校や総合学科も増えました。総合学科とは、普通教育と専門教育の両方を受けられる学科のことで、ビジネス系、国際系、理数系、芸術系など、選択できる科目は様々です。

また、より具体的に、大学進学後のキャリア形成を見据えたカリキュラムづくりを進めている学校もあります。
たとえば、東京都の進学指導重点校である戸山高校では、2016年から、医学部進学を目指す生徒が、ともに総合的な進路指導やキャリア教育を受ける「チームメディカル」を結成。千葉県の東葛飾高校でも、2015年度から「医歯薬コース」が設置されました。

専門教育校の再編と進路の多様化

工業高校、商業高校など、専門教育校の改編も進み、「科学技術高校」や「産業高校」といった名称で独自の教育を目指す学校もあります。多くの工業系専門教育校では、技能習得と進学指導の両方に力を入れており、企業での長期の現場研修がカリキュラムに組み込まれた「デュアルシステム」を取り入れる高校も生まれました。産業高校は、生産に関わる農業科や工業科、流通に関わる商業科などのカリキュラムを再編し、生産から流通まで一貫して学べるようなシステムになっています。

地域の魅力を生かし、全国募集を行う高校も

少子化の影響で公立高校の統廃合が進む中、地域の特色を生かした学科を設置し、全国募集を行っている高校も出てきています。
たとえば、長野県立白馬高校では、スキーの名所という地域性を生かし、2016年度から「国際観光科」を設置し、全国募集を開始。隠岐諸島にある島根県立隠岐島前高校は、2010年から寮費等の補助を受けられる「島留学」制度を設け、県外からの入学者を受け入れています。2015年、全寮制の中高一貫男子校として出発し、JAXA(宇宙航空研究開発機構)との連携による「宇宙学」を特色として掲げる鹿児島県立楠隼中学・高校、信楽焼などの技術が学べる滋賀県立設楽高校など、全国募集を始める高校は増えています。

私立高校の学費低減も視野に入れて

保護者のかたの学生時代には、学費が理由で「私立高校への進学は難しい」というケースも多かったと思いますが、近年、私立高校の学費の保護者負担は、世帯年収に応じ、従来の2分の1程度から実質的な無償化まで、大きく軽減の傾向にあります。これらの制度は各都道府県によって異なりますので、ぜひ一度調べてみてください。たとえば大阪府には、年収590万円未満世帯の授業料は実質無償となる制度があります。また、東京都は、2017年1月、年収760万円未満世帯の授業料を、実質無償化する方針を決めています。
学費の軽減を考えれば、志望校の選択肢はさらに広がるかもしれません。

「好きなこと」を伸ばしてくれる志望校の発見を

このように、選択肢が広がっている分、志望校選択には時間がかかります。時間のある春休みこそ、「受かりそうな高校」「知っている高校」といった枠をいったん外して、お子さまと一緒に広い視野で進路について検討してはいかがでしょうか。
「この高校に行きたい!」という具体的な目標ができると、受験勉強にも前向きに取り組めると思います。ぜひ、お子さまの「好きなこと」を伸ばしてくれそうな高校について、楽しみながら情報収集を行ってみてください。

(筆者:安田 理)

プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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