速報!2017年首都圏中学入試 国語

2017(平成29)年の首都圏中学入試には、どんな傾向が見られ、どんな力が問われたのでしょうか。
森上教育研究所主催のセミナー「2017年入試 首都圏中学入試の結果と分析」での、平山入試研究所の小泉浩明さんによる「国語」の分析をお届けします。

※以下は同セミナーでの小泉浩明先生による分析を抄録したものです。

■大学入試新テストを意識した問題づくりが目立つ

分析にあたり、大学入試新テストを意識し、「論理的思考力」「総合型の問題」「主体性」「知識量と活用力」「意欲や物事を成し遂げる力」を問う問題が増えているかどうかに視点を置きました。全体として、記述問題と選択肢問題に変化が見られ、科目横断的な問題も少しずつ増えているなど、新テストを意識した問題が目立ってきているといえます。

■「戦争・平和」をテーマにした文章が増加

例年、物語文では「友人・友情」を扱ったものが非常に多く出題されますが、今年は「父母子」「祖父母・おじおば」「兄弟姉妹」「先生・生徒」などへと分散する傾向が見られました。説明文のテーマも分散傾向にありますが、言語・コミュニケーション、動植物、文芸論、自然・環境など、頻出テーマは今後もさほど変わらないと見られます。
今年、全体として目立ったテーマは「戦争・平和」で、金井直の詩『木琴』(青山学院)、西谷修『戦争とは何だろうか』(立教新座)、中脇初枝『世界の果てのこどもたち』(駒場東邦)、ピースボート編『紛争、貧困、環境破壊をなくすために…』(日本女子大附属)などが出題されました。

■問題文の長さ・難易度・頻出作家

ここ数年、問題文は長文化する傾向にありますが、今年はさほど変化しませんでした。ただし、例年、比較的長い問題文を出題する学校はあります。今年は駒場東邦で16P、本郷で10P、麻布で10P、城北で8.5Pの物語文、明治大付属明治で10.5Pの論説文が出題されました(1PはB5サイズの用紙でカウント)。一方、大人でも読解に苦労するような難解な文章は、今年はそれほど目立ちませんでした。
また、近年は出題傾向に多様化が進み、頻出といえる作家は減っていましたが、今年は8名の作家の作品が3校以上で出題されました。特に稲垣栄洋氏は「植物はなぜ動かないのか」(サレジオ学院・本郷・淑徳与野・洗足学園)、「たたかう植物」(栄光学園、大妻)など、8校で出題。その他、佐川光晴氏、宮下奈都氏、あさのあつこ氏、今井むつみ氏、内田樹氏、小田嶋隆氏、辻村深月氏の文章が3校以上で出題されています。

■記述問題——小論文的な問題や条件記述が目立つ

<本格的な小論文的問題が増えている>

たとえば慶応湘南藤沢では、「じゃんけん」のルールを説明する文章を180字以内で書かせる問題が出題されました。また、問題文の内容に関連して、自分の友だちとのかかわりについて書かせる問題が、暁星栄東<東大選抜I>で出題されています。
このように、身近な題材について考えさせ、書かせる問題は、今後も増えてくると思われます。

また、筆者と異なる考え方を持つAくんとBさんの意見に対し、筆者の考えを踏まえて意見を書かせる問題(芝浦工大柏)など、筆者の考え方や、それに対する反論の内容を理解しつつ、自分の意見を述べるといった、本格的な小論文のような出題も目立ちました。

<工夫が見られる条件記述問題も>

品川女子では、まず抜き出し問題があり、その抜き出した一文のようにいえる理由を80字以内で記述する問題が出題されました。この場合、まず抜き出し問題が正解でなければ、記述問題も正解できないわけで、難易度が上がっています。このような、二段階になった条件記述は海城などでも出題されており、今後増えてくる可能性があります。
一方で、条件を具体的に示すことにより、子どもがより解答しやすいように配慮した記述問題も多く見られました。これらには、記述問題により子どもの発想力や書く力を見たい一方で、白紙解答は避けさせたいという学校側の思いが表れているといえるかもしれません。

■選択肢の長文化、複数選択肢の増加

ここ数年、一つひとつの選択肢の文が長い選択肢問題は増加しています。今年は、和洋国府台で約140字、浅野、市川で約120字、女子学院で90字強の選択肢問題が出題されました。これらは、文章を速く正確に読む能力や「意欲や物事を成し遂げる力」を見ていると考えられます。
また、「ふさわしいもの/間違っているものをすべて」選ばせる、5~6個の選択肢から2個ないし3個を選ばせるなど、複数選択肢の出題も多く、これらは今後も増えていくと考えられます。

■新テストを意識した科目横断的な設問

筑波大附属では、「国語に関する世論調査」の敬語に関する資料を題材に、グラフの読み取りと記述を組み合わせた問題が出題されました。また、光塩(総合)では、ドラえもんのマンガと共に、アンドロイドについて考えて書く問題が出題されています。このような科目横断的な問題は、さらに広がっていくと考えられます。

今後の入試では、幅広く興味を持ち、文章や資料を正確に読み取る力、自ら考える力、書く力を身につけることが、ますます必要になってくるでしょう。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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