算数の問題をじっくり粘って考えることが苦手です[中学受験合格言コラム]
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。
※小泉さんへのご質問は、不定期にBenesse教育情報サイトメンバー向けのメールマガジン「教育情報サイト通信」で募集をいたします(随時の受付は行っておりません)。
【質問】
算数の問題をじっくり粘って考えることが苦手のようで、すぐ「わからない」と言います。図を描いたり、わかっているところには線をひくなどしているようなのですが、あきらめが早いように思います。
相談者:小5女子(論理的・神経質なタイプ)のお母さま
【小泉先生のアドバイス】
今から“step by step”で付けていく「やりきる力」
●「じっくり粘って考えられる」はひとつの才能
「じっくり粘って考えること」が苦手ということですが、こうしたことはひとつの能力、才能だと思います。この能力は中学受験はもちろんですが、中学や高校に入ってから、さらには社会に出てからも必要だと考えます。なぜなら、苦しいことやつらいことに負けずに立ち向かっていく「生きる力」に通じるものがあるからです。中学受験のとらえ方はいろいろあると思いますが、ひとつにはこうした能力を養うための機会であるとも考えられます。せっかく受験をするなら、志望校に合格することももちろん大切ですが、それと同時に「考える力」や「困難に負けない強い気持ち」も養っていきたいものです。
●粘れる子・粘れない子
難しい問題を解くのが好きな子もいれば、すぐにあきらめてしまう子もいます。その差はどこから出てくるのでしょうか? 生まれつきの資質なのでしょうか? もちろん性格的なものはあると思いますが、今までしてきた経験により、物事の取り組み方がかなり違ってくると思います。粘れる子というのは、今までに粘ってよい結果が出た経験がある子どもではないでしょうか。
たとえば、算数の難しい問題をあきらめずに解いて、幸運にも解けた経験をしたとします。難しい問題が解けた喜びが心の中に広がり、誇らしい思いや周りの称賛も得られるかもしれません。そんな時「がんばるってつらいけど、あとでうれしいことがある」ということを学ぶのです。そうすると、それ以降に難しい問題にあたっても「解いてやろう」「あのよい気持ちをもう一度」ということでがんばれるのです。しかし、解けたという経験が少ない場合は、「自分には無理」「つらいだけであとの喜びはない」ということで、途中であきらめてしまいます。あきらめてしまえばそこで終わるわけですから、がんばることができなくなってしまうのです。
こうしたことは、勉強だけのことではありません。遊びを含めたさまざまなことで、同じようなことがいえます。成功体験は、その人のやる気を引き出す大きなエネルギーだと思います。
●ちょっと難しい問題をstep by stepで一つずつ
それではどうしたら成功体験ができるのでしょうか? そのためには、その子どもにとってちょっと難しい課題を与えて、それを克服させることです。しかし、この「課題を与える」というのがなかなか難しいのです。それは、その子どもごとに耐性(「打たれ強さ」とか「がんばれる力」)に差があるので、ある子どもには難しすぎるが、ある子には易しすぎて物足りないものになってしまうからです。難しすぎればいくら粘っても解けないので、「やはり私はダメだ」になるし、やさしすぎてはすぐに解けてしまって、「やった!」という感動は生まれません。その子に合った、少し背伸びをしないと届かないような問題を、徐々にレベルを上げながら与えることがポイントになります。
●今付けたい「やり切る力」
現在小学5年生といえば少年・少女が青年になる前段階です。反抗しだすのもこの時期からでしょうから、なかなか親が言ったとおりに勉強しないかもしれません。本来であれば、小学3年生くらいまでに、やりきったという成功体験をしていると本人も勉強に対する自信を持って、難しい内容にも立ち向かっていきやすいと思います。しかし、こうした体験や力は大人になればなるほど付きにくいものだと思います。さらに、挑戦して失敗することもあるでしょうが、その時の痛手や敗北感は大人になるほど強くなると思います。勉強を含めいろいろなものにがんばれる力を、がんばってやり遂げたという自信を、小学生時代に付けたいものです。その意味では、今からでもがんばる力を付けるべく勉強に取り組ませたほうがよいでしょう。
算数が苦手なら、他の教科から始めてもかまいません。あるいは、比較的苦手ではない単元から始めて、得意にしていってもよいでしょう。そうした一つひとつの積み重ねにより、粘り強くやりきるという気持ちが少しずつでも培われていければと思います。