首都大学東京 都市環境学部 自然・文化ツーリズムコース[大学研究室訪問]

日本が転換期を迎えた今、大学もまた大きく変わりつつあります。そんな時代に、大学や学部をどう選び、そこで何を学べば、お子さまの将来が明るく照らされるのでしょうか。長年の土壌学の研究の中で環境を一般市民のレベルから考える重要性に気付き、「新たなエコツーリズム」の価値について提唱されている首都大学東京都市環境学部自然・文化ツーリズムコースの小崎隆教授の研究室をご紹介します。



■新たなエコツーリズムが地球を救う!


干上がったアラル海に放置されたままの船

「エコツーリズム」という言葉から、皆さんはどんなイメージを持ちますか? 一般的には、手つかずの自然を見学し、非日常を体感するツアーを思い浮かべるのではないでしょうか。それももちろん価値があることです。
しかし、本当の意味で環境の課題について考える機会をエコツーリズムと位置付けてみてはどうかと、近年私は考えています。具体的には、環境問題を抱えた土地を見に行くのです。その問題は、往々にして私たち人間の生活の産物。エコツーリズムを、生活につながる問題を知る機会にしてはどうかと考えているのです。



■29歳で単身渡って知ったアフリカの現状



29歳の時、私はアフリカに渡りました。土の環境を分析し、食料の生産量を上げる研究をする土壌学という学問をさらに進めるためです。研究の中で、バランスを崩してしまった多くの自然環境を目の当たりにします。そして、環境を社会全体で考えるきっかけとなるエコツーリズムに可能性を感じるようになったのです。

まずは、研究の出発点であるナイジェリアの国際熱帯農業研究所での経験をご紹介します。
私たち研究員は、米の安定的な生産を確立させ貧困を緩和するために、現地の人々と共に基礎研究をしていました。しかし、苦労して田んぼを作っても、翌年訪れてみると掘り返してイモが作られていたりするのはざら。
聞くと、「去年は米が食べたい気持ちだったけれど、今年は食べ慣れたイモが食べたい」という理由です。食生活や文化、風土の違いを理解したうえでの、研究や技術協力が必要なことを痛感させられました。



■繰り返される悲劇を目撃したカザフスタン



カザフスタンのアラル海も研究の対象です。アラル海は砂漠の中にあり、以前は東北地方ほどの大きさを誇っていましたが2000年初めまでにそのほとんどが干上がりました。

1960年代の冷戦時代、湖に流れ込む川の水を利用した灌漑(かんがい)農業がこの土地で進められました。米ソ(現在のロシア)の競争は、農業技術の分野でも繰り広げられており、砂漠という一見すると貧しい土地で、米ソ各々が自分たちの技術を駆使すれば、農作物ができるようになるのだというアピール合戦が行われていたのです。




土壌の表面に付着した塩分

当時実施されていた灌漑農業は、アラル海に流れ込む川の水を砂漠にかけて、水分を含ませることによって農作物を作るという大変単純なものでした。しかし、砂漠に突然大量の水をかけると大きな環境問題を招くのです。いったん砂漠に染み込んだ水が蒸発する際に、土の中の養分(塩分)を地表面に引き上げ蓄積させていくのです。こうしてできた塩まみれの土地では、作物は何も育ちません。このようにしてアラル海は干上がり、周りの農地と共に死んでいったのです。

実はこのような例はアラル海だけではありません。古くは世界4大文明の時代から、同じ失敗を繰り返していました。「この土地がダメになったら、他の土地に移ればよい」という無責任な方針で進めてきたのがこれまでの世界の農業開発計画なのです。

世界の環境問題は、専門家だけが知っていればよいというものではありません。一般のかたと環境の大切さやそれを守る術(すべ)を一緒になって考えていかなければならないと思っています。そして、そのツールとなるのが、エコツーリズムです。そのため、私は「エコツーリズムは地球を救う!」と学生たちに熱く呼びかけています。学生たちもこの思いを理解し、実際にエコツーリズムへ参加を決意したり、現地を調べることを始めたりしています。


プロフィール

小崎隆

小崎隆

首都大学東京 都市環境学部 自然・文化ツーリズムコース教授。自然と人間の共存戦略、エコツーリズムによる環境教育、土地劣化メカニズムの解明と対策構築などを研究テーマとし、アフリカやユーラシアなどで現地調査を行っている。

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