思考力の下地をつくる [中学受験 5年生]

保護者の役割は、成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。
この春5年生に進級するお子さま向けに、近年、ますます増えつつある総合問題や記述問題に取り組む思考力を付けるため、ご家庭で心がけていただきたいポイントについて取り上げます。



■2015年度の入試傾向を受けて

2015年度の中学入試を振り返ると、教科横断的な総合問題や、出題されたテーマに対する自分の考えを述べることを求める記述問題が増えている、という傾向がはっきりと見られます。

たとえば世界遺産に登録された富岡製糸場に関する社会の問題で、立地条件や歴史的な背景にとどまらず、蚕に関する理科的な知識が問われる、理科で食卓によく上る身近な食材についての「食育」を絡めた問題が出題されるなど、特に難関校で教科横断的な傾向が強まっています。柔軟な思考力が、ますます求められるようになってきているのです。これは、2020年度から実施される大学入試の方向性を踏まえたものと考えられます。



■思考力を育てる「体験」を!

思考力は、机に向かって学んでいるだけではなかなか身に付きません。バラバラな知識より、ストーリー性を伴った記憶のほうがずっと定着しやすいことは、既に知られています。柔軟な思考力や発想力を育てるために、いちばん効果的なのが「体験」です。たとえば、知らない港町を訪れた場合、そこでとれる魚を見たり、食べたりできますし、港湾の巨大施設や船が好きな子、古い街並みや歴史的建造物に興味を持つ子どももいるでしょう。五感が様々に刺激され、さまざまな視点を持つきっかけができます。

ですから、5年生の長期休暇や週末には、ぜひ博物館や美術館、動物園や水族館、劇場やコンサートホール、海や野山など、さまざまなところに連れて行ってあげてください。お住まいの地域から離れたご親戚やお友達のところへ遊びに行くだけでもよい刺激になります。出かける暇を惜しんで勉強させるより、「おでかけ」をしたほうが、ずっと勉強になるのです。



■保護者のかたも「おでかけ」を積極的に楽しんで

このようなおでかけの時、保護者のかたはあまり構えず、ぜひ、ご自身の息抜きのつもりで楽しんでいただければと思います。たとえば博物館に行って、保護者のかた自身が「これは勉強だから」と額にしわを寄せてノートをとったり、帰ってからお子さまにレポートを書かせたり、というのは、わざわざ子どもを博物館嫌いにさせているのと同じこと。子どもたちは大人の「魂胆(こんたん)」を敏感に感じとり、引いてしまいます。まずはご自分が楽しむことに集中してください。生物学にしろ、歴史にしろ、どの学問分野でも研究が進んで、現在の定説は、私たちがかつて教科書で習ったこととはまったく違っていたりしますから、ミュージアム見学は大人も大いに楽しめると思います。

また、恐竜が好きな子もいれば、電車の好きな子もいて、保護者の興味と子どもの興味もずれている場合があります。連れて行ったミュージアムなどにあまり興味を持たなければ、しつこく「おもしろいでしょう」などと声をかけず、別の方法を考えてください。「好き」なものがひとつでもあれば、そこを起点として好奇心や思考力はどんどん伸びていきます。



■「プレゼント&お手紙作戦」も効果的

また、手紙を書くことは、思考力や表現力が身に付くのでおすすめです。おじいちゃん、おばあちゃん、転校していったお友達など、お子さまがお手紙を書きたくなるような相手が何人かいるとよいですね。
さらに、ご親戚や知人のかたに協力を仰いだ「プレゼント&お手紙作戦」は、非常に効果的です。たとえば、劇場への招待状がおじさまから届きます(これはもちろん、あらかじめお願いしておくのです。子どもがわくわくするようなプランを考えるとベストです。)楽しく観劇したあとは、いただきっ放しでは失礼だから、お礼状を書きなさいねとお子さまに伝えておきます。お子さまは感動を伝えるために工夫しますから、自然に文章がうまくなるんですね。絵やマンガを入れるのもおすすめです。

実は私も知り合いに頼まれて、このお手紙作戦に協力したことがあります。プレゼントを送って、お礼状をもらったら、そのお返事で大いにほめてあげる。「文章、上手だね。目に浮かぶようだね」とか(笑)。今、その子は中学生ですけれど、いつも学校でほめられるくらい、ものすごくいい文章を書きます。やはり小さい頃にいっぱい書いて、ほめられると、気持ちも乗ってくるんですね。

「おでかけ」にしろ、お手紙作戦にしろ、まずお子さまの「気持ちが動く」ことが大切です。「好き」とか「おもしろい」といった気持ちが動くからこそ、その先に好奇心や探究心、表現の工夫が生まれるのです。お子さまの思考力・表現力を育てるために、この1年はぜひ意識して、刺激的な体験をたくさんさせてあげてください。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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