受験校決めから学費まで 第2回 「募集定員」に変更はないか[高校合格言コラム]

「募集定員」に変更はないか

 前回は、「進路希望調査」の見方についてお話ししました。今回は、志望校の定員数についてお話しします。

 ご承知のように、入試の倍率に大きく関係する要素として、「募集人員」の増減があります。これについては、平成26年度入試の埼玉県を例にとってお話ししましょう。

 埼玉県では、平成26年の中学卒業予定者数は182人減り、6万5751人になる見込みのため、公立全日制高校の募集数は160人減り4万人になっています。中学卒業予定者数に対する募集数の割合は60.8%で平成25年と変わっていません。
 埼玉県では2年連続で中学卒業予定者が減少するため、公立の募集数も2年続けての削減となっています(東京都など、増加するところもありますが、今年は多くの都道府県が埼玉県のように減少しています)。しかし、地域によっては中学卒業予定者が増えているところもあり、地域ごとの中学卒業予定者数の変動に合わせて募集数も毎年細かく変更しているのです。

 埼玉県では平成26年度は13校が募集数を削減する一方、9校が増やします。
平成25年に増員した県立浦和、浦和第一女子が募集数をもとに戻すため、1クラス減少します。両校とも県内の進学校であるため、応募者数が減っても難度は高いままで、変わるとは考えられません。

 平成24年には県立川越、川越女子、蕨、平成25年には県立浦和、浦和第一女子といった進学校が増員しましたが、平成26年に増員する進学校は春日部のみです。ですから春日部に応募者が集中すると実倍率が上昇することが考えられ、定員枠拡大により易しくなることはあまり期待できないでしょう。
 また、県立川越、川越女子は募集数減から応募者を減らした平成25年の反動で少し上向く可能性が高いと思われますが、募集数が減る県立浦和、浦和第一女子を敬遠する学力上位生の一部が移動してくると、さらに難化することが考えられます。

 東京都の例も挙げてみます。平成26年度入試で「募集人員」を増減する高校の志望者数を今度の「募集人員」で割った倍率の変化です。



 平成26年は、進学指導重点校の戸山や国立をはじめ27校(表の薄い赤の地色の学校)で、各1学級増やし、昨年学級増を行った駒場や文京など9校(青い地色の学校)で、各1学級の募集を減らしています。

 募集の学級増を行った学校は、受け皿が大きくなるため、表のように多くは倍率が前年より下がるのが普通ですが、戸山の女子のように上昇するケースもあります。学級増を上回る志望者数の増加があったためです。逆に、学級減を行う学校では倍率が上昇するのが普通ですが、駒場の男子や本所の男女のように下がった学校も見られます。

 このように他校の影響などもあり、「募集人員」が減るから難しくなる、増えるから易しくなるとは一概にはいえないのですが、一般的にはお子さまの志望校が「募集人員」を増やしていれば易しくなる、減らしていれば難しくなるととらえていいでしょう。
いま一度教育委員会のHPで志望校の定員が増減していないか、近隣の似たレベルの学校はどうか、確認してみてください。

 次回は、私立高校の「コース選択」についてお話しします。


プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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