基礎から徹底的にやり直したのですが、受験まで間に合いません[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小6女子(性格:強気タイプ)のお母さま


質問

計算を除いて、算数が全体的に苦手なようです。簡単な文章問題なら、少しヒントを与えるとできるのですが、入試レベルの応用問題になると行き詰まってしまうようです。基礎から徹底的にやり直しましたが、やはり受験まで間に合いませんでした。これからの対応を教えてください。


小泉先生のアドバイス

志望校の頻出単元に注力し、しかも合格最低点を目安にする。

「やはり受験まで間に合いませんでした」という文面から、入試本番を直前に控えているか、あるいはすでに入試が終わっているのか判断に迷いました。今回は前者、入試直前の場合の対応としてご質問にお答えします。
あと2~3か月しかないのに、入試レベルの応用問題が解けなくては、さすがに「もうだめだ。間に合わない」という気持ちになられると思います。でも、最後まであきらめないで努力し続けることで、なんらかの活路が開かれる可能性もあります。残りの日々を有意義に過ごし、悔いのない中学受験であったと思えるようにしたいものです。

さて、残された時間を最大限に生かすためには、最も効果が期待できそうな勉強法に切り替えるべきでしょう。その方法とは、志望校に頻出の単元で、しかもお子さまが、得意ではないにせよそれほど苦手ではない単元から、1つずつ潰していくやり方です。
まずは、過去に出題された入試問題(過去問)を分析して志望校の頻出単元を特定します。そして、その中でも取り組みやすそうな単元を選べたら、今まで勉強していた教材を使ってその単元をつまずいているレベルから復習していきます。どのレベルからやり直さなければならないかによっても異なりますが、この方法であれば2週間程度で1つの単元のレベルアップは可能だと思います。そして、そのペースでこなしていけば、受験までに3~4単元は潰すことができるでしょう。
頻出単元ですから出題される可能性が大きく、勉強した成果も得点結果に反映される可能性が高いと思います。要は、「すべてを徹底的にやり直す」のではなく、「出題されそうなところ、少しの努力でより効果が出そうなところ、つまり“おいしいところ”から最優先に潰していく」という考え方です。
中学や高校時代に行ったことがあるかたも多いと思いますが、いわゆる「試験にヤマを張る」とか「一夜漬け」に似ているかもしれません。ただし、いくら効果的とはいってもやはり「ヤマを張る」のは不安なものです。受験生本人が「もうダメだ」とか「やってもムダだ」と思っていては、残された時間で有意義な勉強ができるはずもありません。

そんな時は過去問演習によって、合格最低点までの差を確認するとよいでしょう。この時期、受験生はすでに志望校の過去問を何回か解いていることと思いますので、実際に得点を計算し、合格最低点(その年に合格した生徒のいちばん低い4科目の合計点)と比べてみます。たとえば、算数で足を引っ張っている現状を考慮して、受験生の点数が算数22点、国語75点、理科52点、社会45点、合計194点だったとします。配点は国語と算数が100点で、理科と社会は75点です。4科目の平均得点率は194÷350=55.4%ですから、算数で足を引っ張っていることは明白です。

しかし、その年の合格最低点が212点だとしたら、あと18点で合格できたことになります。どこで点を得るか? 国語や理科では、これ以上の得点の上積みは望めそうもありません。社会ならばあと数点は上積みできそうですが、やはり、算数で18点多くとる算段をするのが現実的でしょう。点数で比べると22点から40点にするには倍近くも得点しなければならないのですが、問題数で考えれば小問であと3~4問というところでしょうか。
入試問題でも最後のほうは難しいでしょうが、最初や真ん中あたりの問題は比較的取り組みやすいものが多いと思います。実際に過去問を解き「この問題とこの問題で得点できたら、なんとかなる!」と実感できれば、頻出単元を復習してマスターしていくことにも手応えを覚えるはずです。これが大切なのです。「もうダメだ」と思いながら、言われたことだからとイヤイヤ問題を解くのと、1つ解けばそれだけ合格に近付くと感じながら解くのとでは、吸収力が違ってきます。

お子さまに明確な目標を示し、確かな希望を持って学習するように指導していくことです。入試直前の時期は特に、受験生は不安にさいなまれることが多いでしょう。ただでさえ不安ですから、今回のように「直前での逆転」をねらう場合には、他の生徒たち以上に集中して、しかも明確な目的意識を持って勉強することが必要です。
その意味でも、志望校の頻出単元に注力し、しかも合格最低点を目安にするという学習戦略は有効な手法の一つだと思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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