「……だから。」という解答の仕方を何回練習しても覚えられません[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小3女子(性格:大ざっぱ・わんぱくタイプ)のお母さま


質問

読解問題で、問われている内容とずれた答えを書いてしまいます。答えるときのパターン、たとえば理由を聞かれたら、「……だから。」という解答の仕方を何回練習しても覚えられません。設問の意味が理解できていないだけなのか、文章さえきちんと読めていないのか、親から見てよくわかりません。どのような指導をすればよいでしょうか。読書感想文などは小学校の先生に高く評価してもらっているので、読み書きがまったく苦手というわけではないと思います。自由に意見を書くのと、決められた内容について意見を書くのと、どのような違いがあるのでしょうか?


小泉先生のアドバイス

お子さまの書いた読書感想文が良いテキストになると思います。

記述問題の解き方を教える時、「なぜですか?」という設問に対しては「~だから。」と答えなさいというように、パターンで教えるやり方は効果的です。わたし自身も記述の書き方を指導する時は、そのようにしています。しかし、なかなか覚えられない生徒さんもいます。よく出てくる設問の形は4つしかないのですから、すぐに覚えられそうだと思いますが、なかなか使いこなせるようにならないのです。でも、間違いを指摘すると「あっ、そうか!」とすぐ気がつく場合は、根気強く誤りを指摘していけば、徐々に間違いは少なくなってくると思います。
ただし、低学年から中学年にかけては、問われている意味自体がよくわからない場合があります。そんな時は、その意味から指導する必要はあります。たとえば、「なぜ問題」は「理由」が問われているのであり、文末の終り方を含めてどうすれば「理由」を答えたことになるかという根本的なことを教えるということです。基本的なことほど教えるのが難しく、指導する側としては困り果ててしまうものですが、そんな時は子どもが理解しているところからの指導が効果的です。

今回の場合でしたら、お子さまの書いた読書感想文を使った指導が良いと思います。「読書感想文などは小学校の先生に高く評価してもらっている」ということですから、まずはそれを読んで内容を分析するのです。着目すべき点は、「感想や意見が書いてあるか?」「それらの理由が書いてあるか?」といったところでしょう。高い評価の感想文なら、おそらく、感想やその理由が書いてある可能性が高いと思います。そして、もし書いてあったら、お子さまの「感想」の部分を差し示しながら、なぜそのように感じたかを聞いてみましょう。「ここに書いてあるでしょう」と言うかもしれませんし、書いてあることと同じ内容を説明するかもしれません。いずれにしても、今のやり取りが「理由を問われて説明する」ということであり、テストで問われる場合と同じであることを気づかせるのです。

自分ではしっかりできている、あるいは日常生活ではできているのに、試験で問われるとできないのであれば、それらが同じことであるのにもかかわらず、お子さまの頭の中では一致していないということです。そして一致させるには、お子さまが無意識にやっている事柄をとらえて、「まさにそのことが、問われてそれに答えることなんだ」ということを「実感」させてあげれば良いのです。
自分でやっているのにわからないはずはないとお思いになるかもしれませんが、人は案外思い込みで生きています。ましてや、経験の少ない小学校低学年や中学年の生徒では、正しく理解できていない事柄が少なくないのです。そんな場合は、今回の「感想文」のように、前に成功した体験から「実感」させることが効果的です。ぜひ、一度試してみてください。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

子育て・教育Q&A