1月校受験の際に注意したいこと~本命校とタイプが似ている場合、似ていない場合[中学受験]

東京や神奈川の中学入試は毎年2月1日が解禁日でそれ以前に入試を行うことはできないが、埼玉や千葉では12月や1月に入試を行うことができる。東京や神奈川の受験生・保護者は、試験慣れのために埼玉や千葉の中学校を受験する例が多い。試験慣れの目的のために、本命校の受験が間近となる1月に受験するのが一般的だ。

1月校受験を本命校の受験慣れのために行うのであれば、できる限り本命校に近い入試問題を出題する学校を受験すべきだ。算数・理科・社会などは分野・単元などの出題傾向、国語では小説文が多いか論説文が多いかなどの出題傾向が、本命校に近い学校を選択すると良いだろう。出題傾向だけでなく問題の難易度も重視すべきだ。偏差値の高い学校だからと言って、難易度が高い問題を出題するとは限らない。むしろ基礎力を重視する学校では、比較的易しい問題を大量に出題する場合もある。本命校と同レベルの問題を出題する1月校を受験すべきだろう。

東京や神奈川から受験する生徒の多い中学校では、在校生のうち、地元の生徒の占める割合が50%以下となる学校も多い。また、在籍生の志望順位を調べたところ、在籍校が第1志望の生徒が20%程度の1月校もあった。つまり、80%の在籍生が第2志望以下に設定していたことになる。その中学校は、不本意入学の生徒が多いはずで、無気力な生徒が多く、活気のない学校かと言えばそうでもない。実際に観察してみると、偏差値も高い中学校なので、在校生は聡明で明るく、学校生活を楽しんでいるように見える。
その中学校の生徒募集では、受験生は第1志望の生徒を増やすよりもレベルの高い生徒を集めたいという明確な方針がある。在校生の保護者に「在籍校は我が子に合った学校だと思いましたか?」のようなアンケートを行ったところ、「はい」と回答した割合は、入学前は55%であったが、入学3か月後86%となっていた。わずか3か月で30%も増加したことになる。なぜこのように短期間に変化するのか、その中学校の先生に話を聞くと、「本校が第1志望ではない在校生が多いことはわかっています。入学後、なるべく早い時点で、入学生が自分の学校に愛着が持てるように、教職員一同、努力しております」という回答があった。

進学する可能性のある1月校なら、本命校に教育方針や校風が近い中学校を選ぶべきだろう。決して進学することがないお試し受験ならば試験のタイプが似ているだけの学校で良いかもしれないが、原則として進学を希望しない学校を受験すべきではない。その場合は、通えない遠隔地の学校にするなどで、合格しても進学できない学校を選ぶべきだろう。受験した学校が、1月校を残し、すべて不合格となることもある。本命校と教育方針や校風のタイプが似ている学校ならば、進学しても子どもが納得して通えるのではないか。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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