低学年のうちから読解力をつけるにはどうしたらよいか[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小2女子のお母さま


質問

低学年のうちから読解力をつけるにはどうしたらよいか。


小泉先生のアドバイス

大切なのは「環境」を作ること。

「低学年のうちから読解力をつけるには」というご質問ですが、そのためには、読書する習慣を身につけることと、考えながら文章を読むくせをつけることです。しかも、それらのことが自然になされる「環境」を作ることが大切です。
読書の習慣をつけるには、何といっても幼いころからのお母さんの読み聞かせが効果的だと思います。幼児期からの、絵本から始まるお母さんの読み聞かせは、親子の楽しいひと時であるとともにお子さまの好奇心を広げます。
同じ本を何回も読み聞かせることをねだることもあるでしょうが、飽きずに付き合ってあげてください。物語の展開や表現の仕方を暗記するまで繰り返すことで、読解力はどんどんついていきます。あるいは、お子さまがいろいろな質問をする場合もあるでしょう。そんな場合はていねいに説明してあげるのも良いでしょうし、逆に「なぜだと思う?」と聞いてあげても良いでしょう。お子さまのさまざまな考えが物語をふくらませ、想像力が培われていきます。こうような環境のなかで、子どもたちは読書の習慣を身につける準備もしていきます。

読み聞かせの次は、お子さまにも読んでもらうと良いでしょう。最初はお子さまとお母さんが交互に読んでいき、慣れてきたら、だんだんお子さまが読む量を増やしていきます。途中で「なぜだろうね?」と質問してあげるのも良いでしょう。また、物語であれば、その登場人物の感情を込めて読むのもおもしろいと思います。音読の目的は、読み飛ばしをなくすためです。ある程度のスピードは必要ですが、なによりもていねいに読むことを大切にすると良いでしょう。物語を読むだけではなく、学校の教科書などにある説明文などを読む練習も大切だと思います。

音読と並行して、自分一人で本を読む読書の習慣も身につけていきましょう。お母さんの読み聞かせから、少しずつ自分の好きな本を静かに読むようになることが多いと思いますが、すんなりと移行しない場合もあります。
この時期、お子さまが読書の習慣を身につけるかどうかは、やはり環境によることが多いと思います。たとえば、お母さんご本人があまり本を読まない場合は、お子さまも本を読まなくなる可能性は大きいと思います。読書はある程度習慣性のものであり、しかも文字を読むという≪作業≫をしなければなりません。スイッチをひねって、テレビの画面に映し出される映像を受動的に見るよりも、やはり努力が必要です。
しかし、本が手元にあって、まわりの人も読書をしているという環境があれば、最初はそれほど興味がなくても、少しずつ読書の楽しみに浸っていくことでしょう。そのためには、お母さんやごきょうだいが本が好きで、一緒に本を読むような環境があれば、無理なく読書の習慣がついていくと思います。あるいは、無理はしない程度に、≪読書の時間≫を決めてあげるのも一つの方法だと思います。

さて、次にありがちなのは、本はよく読むが、読む本が偏っているという悩みでしょう。ゲームの攻略本のようなものやファンタジー、あるいは軽い恋愛小説など、あまり読解力がつきそうもない本を、子どもたちは好むものです。このような場合でも、そういう本を読むのを無理に規制すると、読書自体を拒絶するようになる場合があります。それよりも、お母さんが読んで本当におもしろかった本をお子さまにすすめて、感動を分かち合うようにすると、さまざまなジャンルの本を読むようになるでしょう。逆に、お母さんが本を読まずに、いわゆる「読ませたい本」のみを無理やり読ませるのはあまり感心しません。あくまでも読書は楽しみの一環であり、その延長に読解力があるのだと思います。
同じ文章を読んで、それについて感想や意見を話し合える人がいると楽しいものです。お友達でも良いのですが、まずはお母さんがその役目を引き受けてあげると良いでしょう。このような環境に育った子どもは、考えながら本を読むようにもなりますから、読解力がどんどん伸びていくと思います。

さて最後に、いわゆる問題演習と読書についてお話しします。入試問題は、決められた時間内に決められた形式で問題を解き、点数が付けられます。一般的な読書とはやはり違う力も必要です。読書の習慣があるお子さまのほうが有利であることは明白ですが、やはり問題文の読み方や問題の解き方、記述の方法などは別に練習する必要はあります。読書とは別の学習として、ドリルなどをされると良いでしょう。ただし、低学年のうちから国語の問題演習ドリルを多くこなしても、それほど効果はないと思います。低学年のうちは、やはり楽しみながらの読書がなによりも効果的でしょう。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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