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総合監修:二瓶 健次 先生
各専門分野の先生の紹介
体の部位アドバイス - 歯に関すること
毎日昼寝のときや夜寝る前、夜中など母乳をほしがるのですが、おっぱいをくわえたまま寝ています。虫歯だらけにならないか心配です。早く断乳した方がよいのでしょうか?
今まで毎日、昼寝のときや夜寝る前、夜中は2時間おきに起きて母乳をほしがるのであげていますが、おっぱいをくわえたまま寝ているので、このままでは虫歯だらけにならないかとても心配です。歯みがきも、とてもいやがるので全然できていません。
このような場合は、早く断乳した方がよいのでしょうか?
虫歯になる危険性はかなり高いと思います。歯みがきもいやがるとのこと、典型的なNursing caries(ナーシング カリエス)のパターンです。できるだけ早く断乳した方がよいでしょう。ただし、最近母乳期間の長い子は、知能の発達に好影響と言われており、母乳を与えながら上手にフッ化物を応用するといいでしょう。
虫歯の原因は4つあります。まず虫歯菌(ミュータンス菌など)の存在、糖質を中心とした食べ物、虫歯になりやすい歯の質、それに時間要因です。最初の3つは皆さんよくご存じだと思いますが、ある程度避けられません。口の中を無菌にすることはできませんし、誰にでも虫歯菌は存在します。食事を取らないわけにもいきません。歯の質は生まれつきです。丈夫な身体があるように、丈夫な歯の持ち主がおります。
そこで問題は時間なのです。この時間要因の中でも、食べ物が口の中にとどまっている時間が長いほど、虫歯になりやすいのです。食べたらすぐみがくというのも時間要因です。虫歯菌により産生された酸によって、歯の表面が溶け始め(脱灰)ると、唾液中のカルシウムなどにより再石灰化(硬くなる)がはじまります。この関係を繰り返し、そのバランスが崩れると虫歯になります。すなわち口の中に食べ物が長い時間留まっていると再石灰化がおいつかず虫歯になるのです。
例えば、おやつの回数が多い子どもほど、乳歯の虫歯が多いことがわかっています。
お子さんの場合、寝ているときに母乳を飲み続けているとのこと、糖質を含んだ母乳を常に口の中にとどめていることになります。一番虫歯になりやすい環境だと思います。
日中と違い、寝ている間はほとんど口を動かしません。唾液(だえき)も減少します。その間に虫歯菌はどんどん増殖し、歯は侵食されます。
そこでこのような状況で虫歯になったのを、欧米ではNursing(授乳) caries(虫歯)と呼んでいます。
できるだけ速やかに断乳した方がよいと思います。そして何とか歯みがきができるようになるとよいですね。この年齢ですとおそらく10本くらいの歯が生えていると思います。
ナーシングカリエスは上の前歯の裏側からできてきます。したがって前から見ても見えません。一度小児歯科医に診てもらうとよいでしょう。
ただし母乳による赤ちゃんの消化管感染症や中耳炎の予防効果など、多くの有効性(エビデンス)が知られています。
最近米国の医学雑誌に、母乳による授乳期間の長さと、3歳時点での受容言語能力および7歳児の言語・非言語能力に関連があり「生後6カ月までの母乳限定授乳および、少なくとも生後12カ月まで、母乳による授乳の持続が、世界的に推奨される」と述べています。
これらのことから、母乳授乳を続けながら上手にむし歯予防をするために、ますますフッ化物の応用が重要になります。(JAMA Pediatric 2013.7.29オンライン版より)