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総合監修:二瓶 健次 先生
各専門分野の先生の紹介
体の部位アドバイス - 皮膚に関すること
生まれつき右の肩甲骨に小豆大のしみがあり、生後9ヵ月ごろから膨らみ、色も濃くなり始めました。かゆみや痛みはないようですが、生まれたときより確実に大きくなっています。
生まれつき右の肩甲骨上部辺りに小豆大のしみがありました。それが生後9ヵ月くらいから膨らみ、色も濃くなり始めました。1歳ごろに日焼けをしたあとにかさぶたのようなものができて、1〜2日後にかさぶたは取れて色も薄くなったのですが、すぐに色も濃くなってしまいました。
かゆみや痛みはないようですが、気がついたときに見るとしみのまわりが赤くなっていることがあります。しみの大きさも生まれたときよりは確実に大きくなっています。このまま様子を見ていてもいいのでしょうか?
肥満細胞腫(さいぼうしゅ)という生まれつきのあざの一種と思われます。刺激により赤くはれたり、水疱(すいほう)やかさぶたを作ったりしますが、悪性ではありません。数年の経過で徐々に薄くなり、ほとんどが自然治癒しますので様子を見て大丈夫でしょう。
肥満細胞腫というのは、生まれつきある褐色〜赤褐色(レンガ色)のあざの一種で、普通円形から楕円形の形をしており、その径が5mm〜50mmくらいまで大きさに相当幅があります。
数も1個から数十個にも及ぶものもあります。
あざの部分が擦れたりして刺激を受けた時、または入浴後、発熱したとき、日焼けしたとき、激しく泣いたときなど、体温が高くなったときなどに赤みを増して、あざの部分だけ少し盛り上がってはれたようになります。はれが強いと中央部が水疱になることもあります。水疱になった場合はやがてつぶれて、2〜3日後にはかさぶたになり、1週間でかさぶたがはがれて治っていきます。
水疱にならずに赤くはれただけなら、数時間から1日で元の色に戻ります。
マッサージや体を洗うときなどに、あざの部分を何度もこするとやはり赤くはれることがあります。
診察のときに、このあざをつめやペンなどでわざとこすって赤くなるのを確かめることは、ダリエ徴候といって肥満細胞腫の診断の有用な手がかりになります。
肥満細胞腫というのは、文字通り肥満細胞という聞き慣れない名前の細胞が集まってできているあざです。
肥満細胞は血液中にも、体のいろいろな組織にも、正常でも存在する細胞で、細胞の中にヒスタミンという化学物質をもっていて、じんましんやアレルギー反応を起こすときに、このヒスタミンを細胞の外に放出します。その結果、周囲の血管が拡張して血漿(けっしょう)成分が血管の外にもれ出るため、赤くなって浮腫を起こすのです。
ちょうど、じんましんがそこにだけ出ているのと同じことです。そこでこの病気を、別名「色素性じんましん」とも言います。
温熱刺激や、こすれたりする機械的刺激によって、あざの部分が赤く膨らむ以外にも、人によってはヒスタミンの作用によって、全身の皮膚が真っ赤になったり、吐き気や嘔吐(おうと)、ときに意識がなくなることさえあります。
こういうときは、ヒスタミンの働きを中和する抗ヒスタミン薬をすぐに飲ませるか注射します。
乳幼児期は、赤くはれる発作をしばしば繰り返しますが、年を経るごとにその回数が少なくなり、それとともに色も薄くなり、7〜10歳ごろまでにはほとんど見えないくらいになり、自然治癒する予後のいい疾患です。