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総合監修:二瓶 健次 先生
各専門分野の先生の紹介
体の部位アドバイス - 皮膚に関すること
生まれつき舌全体と下唇半分に海綿状血管腫(けっかんしゅ)ができています。何が原因で、今後はどのような治療になるのでしょうか。
3ヵ月になる女の子ですが、生まれつき舌全体と下唇半分に海綿状血管腫(けっかんしゅ)ができていると診断されました。今後、患部が大きくなったり痛みが出て治療が必要になるでしょうとのこと。現在は、母乳も飲めており、体重も増えていますが、下唇の患部が少し大きくなってきているようです。
女の子ですし、患部が目につくので、できるだけ適切な治療を行っていくことで、少しでも状況を改善することができればと願っております。また、非常に珍しい症例とのことですが海綿状血管腫とはいったい何が原因なのでしょうか?
海綿状血管腫ができる原因はわかっていませんが、先天性の血管の奇形の一種と考えられています。治療は、将来部分切除するか、血管の一部を凝固させる方法、または薬を局所へ注射して増大を抑える試みや、血圧を下げる飲み薬などが考えられます。
海綿状血管腫などの、生まれつきある血管腫の原因はまだよくわかっていません。子宮の中で約10ヵ月かかって胎児のあらゆる臓器が作られていく過程で、両親からもらった遺伝子の設計図通りではない、いわゆる突然変異がいろいろな場所で起こっているのです。
そこでさまざまな異常が発生してくることがあるのですが、生命を維持していくうえで重大な支障となるような異常もあれば、外観上の問題だけで生活していくうえではあまり問題にならないような異常もたくさんあります。
血管腫は、後者のようなケースと言えます。
同じ血管腫の中でも、苺(いちご)状血管腫(いちごのように真っ赤で表面がでこぼこしたもの)のように成長とともに自然に消失していくものもありますが、ポートワイン母斑(ぼはん:境界線のはっきりした平らなもの)や、海綿状血管腫(やや青みがかった暗赤色のふれると弾力性のあるふくらみ)のように自然に消えないものもあります。
舌や唇というのはそもそも血管の豊富な組織なので、血管腫がとてもできやすい場所です。
もともと血管の多い場所なので、そこに血管腫ができても一見それほど目立たないこともありますが、海綿状血管腫の場合は成長するにつれ少しずつ大きく膨らんでくることが多いようです。
場所によっては、全部切除するということもできますが、舌や唇ではそうもいきません。もう少し成長してから、大きくなりすぎた部位だけ形成外科的にできるだけきれいに部分切除するか、血管を詰まらせて縮小させる血管硬化療法などが行われることもあります。
また、最近の新しい試みとしてまだ日本では保険適応はありませんが、プロプラノロールという血圧を下げる飲み薬が、血管腫の増大を抑え、縮小させる効果があることが明らかになり、いくつかの施設で試みられているところです。一度、大学病院や小児専門病院の皮膚科を受診されて、お子さんにとって最もよい治療方法を相談されることをお勧めします。