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総合監修:二瓶 健次 先生
各専門分野の先生の紹介
体の部位アドバイス - 耳・鼻・のどに関すること
中耳炎は人からうつるものなのですか?
ぜんそくのアレルギーのある友人のお子さんが1歳のころ、普通の人にはない菌によって中耳炎になり(友人談)、2歳9ヵ月の今も、中耳炎を繰り返し患っています。その友人に家で一緒にゴムプールで遊ばないかと誘われているのですが、中耳炎がうつるものかどうか心配です。ちなみにわが子は、副鼻腔炎(ふくびくうえん)で今は薬を飲んでいませんが、風邪をひくと副鼻腔炎の症状が現れひどいときは薬を飲む状態です。
中耳炎そのものが、人から人にうつることは原則としてありません。ただし、耳漏(じろう:耳垂れ)が出ているときには、耳漏に含まれる細菌を、指などでさわってほかの人や、体のほかの部分にうつさないように注意してください。
中耳炎の原因となる鼻の炎症を引き起こす風邪の症状は、うつる可能性はあります。
しかしながら、中耳炎の原因菌が風邪のウイルスのように空中を漂って人から人に移動することはありませんので、中耳炎そのものがプール遊びなどでうつることは、原則として考えられません。
ただし、今現在、中耳炎にかかっていて耳漏が出ている状態であるならば、指についた耳漏に含まれる細菌を、ほかの人や自分の体のほかの部分にうつして皮膚の感染症を生じる可能性がありますので注意が必要です。
また、ご相談のお子さんには副鼻腔炎があるようですので、鼻の症状が強いときには耳にも影響が出る可能性があると考えられます。そのようなときには耳鼻科で耳をチェックして貰った方が安心でしょう。
ご友人のお子さんの中耳炎の原因菌は、抗生物質に対する抵抗力をもった細菌であった可能性が考えられるようです。
最近では、このような耐性菌による中耳炎が増えていることは事実です。しかしながら、原因菌をしっかり調べて、適切な抗生剤による治療を行えばきちんと治癒することができ、その後に中耳炎を繰り返す原因になることもあまりないので、必要以上に恐れることはありません。
急性中耳炎は、鼻の奥の細菌が耳と鼻をつなぐ耳管(じかん)という管を通して鼻から耳に入り込み、そこで増殖することで生じます。したがって、風邪に伴う鼻汁等の症状のあとに中耳炎を生じるというパターンが一般的です。
特に、小さなお子さんでは、耳管の距離が短く、角度的にも鼻から耳へ細菌が移動しやすいという構造上・機能上の問題で、中耳炎を起こしやすくなっています。同じ年代のお子さんでも、このような構造や機能の微妙な違いによって、たびたび中耳炎を起こす方と、そうでないかたに分かれてしまいます。
成長に伴って耳管の構造や機能がしっかりしてくると、中耳炎を起こすことも少なくなってきますので、小学生になるころには、ほとんどのお子さんは、中耳炎からは卒業されていることが多いでしょう。
ただし、急性中耳炎のあと、完全に治りきらずに滲出性(しんしゅつせい)中耳炎の状態が続いているようですと、その後も繰り返し急性中耳炎を生じる可能性があります。
ご友人のお子さんが急性中耳炎を繰り返しているのは、小さなお子さん特有の耳管付近の構造・機能上の未熟さの問題があるか、滲出性中耳炎等の合併が起こっているためで、耐性菌による中耳炎にかかったこととの関連は薄いと考えます。