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総合監修:二瓶 健次 先生
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生活・健康・安全アドバイス - 食事
血液検査の結果、小麦に反応がありました。以前からパン、うどん、そうめんを食べても何ともなかったのですが、小麦アレルギーなのでしょうか。
10ヵ月になります。卵白のため全身に湿疹(しっしん)ができたと思い、病院で血液検査をしました。
結果、卵白では反応はなく、小麦に1.10UA/mlの反応がありました。
以前からパン、うどん、そうめんを食べても何ともなかったのですが、小麦アレルギーなのでしょうか。また、アトピー性皮膚炎と言われましたが、総IgEが98U/mlだったのですが、小麦の反応と合わせて、アトピー性皮膚炎ということになるのでしょうか。
乳児のアトピー性皮膚炎の原因は食物だけとは限りません。血液検査の結果で小麦の特異的IgE抗体が陽性であるだけでは、小麦アレルギーとは診断できません。今まで何ともなければ、小麦アレルギーである可能性は非常に低いと言えます。
乳児のアトピー性皮膚炎の原因が食物であると思っているかたは多いのですが、必ずしもそうではありません。血液検査の結果、小麦の特異的抗体価が陽性(このお子さんは1.10UA/mlですから一応陽性です)であるだけでは小麦アレルギーとは診断できません。
まして湿疹を除けば、今まで食べていて何ともないのですから、小麦アレルギーである可能性は非常に低いと言えます。
アトピー性皮膚炎と診断するには、かゆみを伴う特徴的な湿疹や、乳児では2ヵ月以上、1歳以上のお子さんの場合は半年以上など、慢性的な経過という特徴を満たし、ほかの病気ではないことを鑑別して診断します。
最近有力な考え方は、湿疹のある皮膚に付着した食物抗原が皮膚の免疫細胞から体内にとりこまれてその食物の抗体を作るというものです。つまり小麦が陽性なのは湿疹の結果であって原因ではないということです。
従って、アトピー性皮膚炎は、食物制限をしただけでは治りません。
ただし、本当に食物アレルギーがある場合は、限度を超えて摂取するとアナフィラキシーショックというショック症状を起こして、命にかかわることもあるので制限が必要となります。
人間には免疫寛容といって、ある食物の特異的IgE抗体が陽性であっても、その働きを打ち消すメカニズムが備わっているのですが、食物アレルギーのかたはその働きが弱いとも言われています。
食べていることで免疫寛容は誘導されやすくなるので、血液検査の値を見て、今まで食べていた食物をいきなりやめてしまうのはむしろ危険です。乳児のようにまだ免疫寛容の機能が発達段階にある場合は、せっかく食べられるようになっていたのに、中止したことで本当の食物アレルギーになってしまう可能性もあるからです。