「それ」を指し示す文章が読み取れない[中学受験合格言コラム]

「それ」を指し示す文章が読み取れない」

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


※小泉さんへのご質問は、不定期にBenesse教育情報サイトメンバー向けのメールマガジン「教育情報サイト通信」で募集をいたします(随時の受付は行っておりません)。


質問者

小4女子(性格:大ざっぱなタイプ)のお母さま


質問

国語の問題文を読むのが苦手なようです。特に、「それ」とは何かを問われる問題では、どの部分を指しているのかを理解するのが難しいようです。


小泉先生のアドバイス

探す手順を教え、探せない場合はヒントを出す。

「それ」「これ」などは「指示語(こそあど言葉)」と呼ばれるもので、文章中で同じ言葉がくり返されることを避けるために使われます。文章をサラッと読んでいる時はそうでもありませんが、「ここの『それ』は何を指しているの?」と改めて問われると、しっかりと読んでいなかったことに気が付くこともあります。特に、指示語の問題になると、指し示しているもの(指示内容)が離れているなど、簡単にはわからない場合も多いため苦手としている子どもも少なくないようです。

指示語が何を指すかを読み取るためには、まずは、指示語の指し示す内容ごとに種類があることを知ることが大切です。すなわち、「物事(これ、それ、この、その……)」「場所(ここ、そこ……)」「方向(こちら、そちら……)」「様子(こんな、そんな……)」などです。たとえば、「それ」の内容を考える場合は、「本」とか「本を読むこと」などの「事柄」を指し示していると推測できます。ただし、指し示すものは単語や部分だけではなく、もっと大きく、文や段落全体などを指す場合もあります。

次に大切なことは、指示語の前後の内容をしっかり読むことです。特にあとには探し出すためのヒントになる言葉が書いてある場合が多いでしょう。たとえば、「それは私にとって耐えられないものでした。」とあったら、「それ」というのは「私」には「耐えられないこと」であることがわかります。これらは指示内容を探す時の大きな手がかりになります。あるいは、「それ」のあとの内容を使って、問いかけの形にしてみるのもよいでしょう。すなわち、「私にとって耐えられないものは何か?」という具合です。このようにすると、探すべきものがずいぶんとはっきりしてくると思います。

さて、次は探す場所についてです。指示内容は指示語の前、しかも近いところにあるのが普通です。しかし、場合によってはかなり離れていることもあります。また、探すべきものが指示語のあとにあることさえあります。指示語はくり返しを避けるために使うのに、なんと、後ろにある場合もあり得るのです。たとえば、「母親の小言」とあり、それをあとで指示語の「それ」で受けてあったとします。そして、さらに「それ」のあとに、「母の小言」を言い換えて「母の説教」という表現があったとします。ここで「それ」が指し示しているのは「母の小言」なのですが、「4字で抜き出せ」という条件があったら、答えは指示語のあとにある「母の説教」になるというしかけです。このように、指示内容は指示語の前にあるとは限りませんから、探す場所は前の方の近い部分から始めて遠い部分へ、そして見つからなければ、あとのほうの近い部分から始めて遠い部分へと範囲を広げることになります。4年生のレベルであれば前の近い部分で見つかることが多いと思いますが、受験レベルになるとより遠く、場合によってはあとにあることもあると覚悟しておいたほうがよいでしょう。

さて、答えらしきものが見つかったら、それで終わりではなく、必ず「それ」に当てはめてみましょう。今回の場合は「母の説教」ですから、当てはめてみると「母の説教は私にとって耐えられないものでした。」となり、すんなり意味が通ります。この“当てはめて確認する”という作業は当たり前のようですが、多くの子どもたちがやっていません。そしてそのために、まちがえを見つけることなく、そのまま書いて×になっているのが現状です。このような見直しは、確実に実施するようにしましょう。

以上、指示語の解き方について説明してきましたが、手順に沿って探すと徐々に見つけられるようになってくると思います。実際にいくつか問題を解かせてみてください。ただし、どうしても探せない場合は、ヒントを出してあげるとよいでしょう。たとえば、「『それ』の1~2行前にある」などと指示内容のある範囲を限定してあげましょう。探しやすくなって、探そうという気力もわいてくることでしょう。くり返しやっていくと、ヒントなしでも探すコツがわかってくると思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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