「叱っても響かない」「言うことを聞かない」中学生にはどう対処すればいい?

ご自身のことを振り返るとよくわかると思いますが、子どもから大人へと移り変わる中学生の時期は、精神的に不安定になりやすい傾向があります。そのこと自体は成長の現れとしてプラスに受け止められても、日々の生活の中でどう接すればいいか悩まれているかたは多いでしょう。とりわけ、この時期のお子さまを叱る場面では反発を招きやすく、親子関係がこじれやすいので細心の注意が必要です。

この記事のポイント

「大人と子ども」ではなく「大人と大人」の親子関係を築こう

小学生の頃は、保護者のかたが「勉強しなさい!」「早く用意しなさい!」などと一喝すると、渋々といった態度かもしれませんが、比較的素直に聞いてくれることが多かったでしょう。子どもの頃は、誰でも「親の言うことは聞かなければいけない」という気持ちを持っているものです。

しかし、中学生くらいになって自我が強くなると、保護者の言うことに懐疑的になり、無条件には従わなくなります。誰が聞いても保護者の言うことが正しい時でさえ、反発されるケースもあるでしょう。そういう時に「正論」だからといって、押し通しても意味がありません。お子さまは保護者の言っていることが正しいとわかっていて、ただ反発したいだけのこともありますから。

お子さまは、大人になろうと必死にもがいている状態です。ですから、保護者もお子さまとの関係を見直すとよいでしょう。小学校時代の保護者とお子さまの関係が「大人と子ども」だとしたら、徐々に「大人と大人」の関係を構築するべき時期が来たとお考えください。子育てのステージが変わってきたととらえるとよいでしょう。いつまでも子ども扱いをしていると、「自分のことをわかってくれない」と、ますますフラストレーションを募らせてしまいます。

大人扱いをすると、「自立心」が芽生える

もちろん、中学生なので考えが足りず、「まだまだ子どもだ」と感じることも多いでしょう。ですから、あらゆる場面で「対等」に接する必要はありません。例えば、保護者のかたが叱って屁理屈を返された時、対等に言い返すと、どんどん口論がエスカレートします。ここは保護者が一歩引いて、「そうね。あなたの言うことも一理あるね」と一旦話を受け入れたうえで、「ただ、私はこう思うよ」と感情的にならずに伝えると、お子さまの心に届きやすくなるでしょう。

そのように大人扱いをすると、お子さまは自分の行動には自分が責任を持たなければならないと意識するようになるでしょう。「勉強しなさい!」と叱りつけると、「勉強しようと思ったのに、お母さんが怒るからやる気をなくした」などと責任転嫁をして、勉強することから逃れようとします。

しかし、保護者のかたが、「あなたはもう自分で考えられる年齢だから、『勉強しなさい』なんて言わないよ」と伝え続ければ、大人扱いをしつつ、暗に勉強が必要というメッセージを送ることができます。こういう態度で接すると、お子さまは勉強に対して自分が責任を持たなければならないことを実感し、自分の行動を見つめ直すようになるでしょう。このようなことの繰り返しで、お子さまの自立心も伸びていくはずです。

必要な場面では「一喝」することも大切!

もっとも、保護者も聖人ではありませんから、勉強せずにダラダラと過ごしたり、いつまでも夜更かしをしたりする姿を見ると、イライラした気持ちが募ることもあるでしょう。ここで感情に任せて怒鳴りつければ、お子さまも反発し、感情的なぶつかり合いに陥ってしまうこともあるかもしれません。また、仮にお子さまが言うことを聞いて、一時的に改善したとしても、それが根本的な解決にはならないことは、保護者のかた自身がよくわかっているはずです。どうしても怒りの感情が止まらない時は、「そうやってダラダラしている姿を見ていると、すっごくイライラしちゃう」などと気持ちをストレートに伝えてもいいでしょう。「〜しなさい」とくどくどと叱るのでなく、あくまでどう感じるかを端的に伝えてみるのがポイント。それが、お子さまが自分の行動を見つめ直すきっかけになるかもしれません。

ただし、お子さまが絶対にしてはならないことをした場合は、厳しく叱ることも必要です。友だちや相手の言動に影響されやすい時期なので、あまり深く考えずに周囲に流されて一緒に悪いことをする場合もあるでしょう。そういう時は、「だめなことはだめ」と断固として譲らずに禁止してください。お子さまが禁止の理由を理解していない場合は、しっかりと説明しましょう。普段からお子さまを大人扱いし、感情的に叱ることをしないからこそ、信頼関係が構築され、こういう場面での一喝がお子さまの心に響くのです。

まとめ & 実践 TIPS

自我が強くなってきたお子さまへの接し方に悩んでいる方も多いでしょう。つい感情的になってしまったり、親子で言い合いになってしまったりして、途方に暮れてしまうこともあるかもしれません。ただ、お子さまは子どもから大人になろうと必死にもがいている状態です。お子さまの自立心の芽生えを阻害しないように「大人と大人」として接し、お子さまを責任ある大人として扱うようにしてみてください。大人として接するからこそ、お子さまの責任感と自立心は育つうえ、いざというときの保護者の言葉が心に届くようになるでしょう。

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プロフィール


酒井 厚

東京都立大学 人文社会学部 教授
早稲田大学人間科学部、同大学人間科学研究科満期退学後、山梨大学教育人間科学部を経て、現在は東京都立大学人文社会学部教授。主著に『対人的信頼感の発達:児童期から青年期へ』(川島書店)、『ダニーディン 子どもの健康と発達に関する長期追跡研究-ニュージーランドの1000人・20年にわたる調査から-』(翻訳,明石書店)、『Interpersonal trust during childhood and adolescence』(共著,Cambridge University Press)などがある。

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