五輪の水泳チームドクターが語る 子どものスポーツ障害【前編】こんな「痛み」に注意しよう

習い事として人気があるスイミング。ほかと比べて打撲などの外傷が少なく、安心して続けられるスポーツです。しかし、関節の痛みなど、スイミングにつきもののスポーツ障害もあります。今回は、2000(平成12)年のシドニーから、オリンピック日本水泳チームのドクターをされている金岡恒治先生に、スイミングにおける子どものスポーツ障害について伺いました。



小学生は肩、中高生は腰の故障が目立ちます

子どもの発達段階別に、どのような故障があるかを見てみましょう。
まず、小学生に目立つのが「肩」の痛みです。肩の痛みは、骨と骨、骨と靭帯(じんたい)が擦れ合うことで炎症が起きて痛みがあらわれる「インピンジメント症候群」を起こしやすく、「水泳肩」という呼び名があるほどです。

中学生以降になると、「腰」の痛みを訴えることが多くなります。腰痛は、椎間(ついかん)関節と椎間板の痛みに大別されます。
1つ目の椎間関節の障害は、腰を後ろや斜め後ろに反らせようとすると痛みが出ます。この痛みをがまんして腰に負荷をかけ続けると、疲労骨折を起こしてしまいます。
2つ目の椎間板による腰痛は、脊柱(せきちゅう)のクッションの役割をしている椎間板内の水分量が減少することで痛みを感じやすくなり、進むと椎間板ヘルニアになります。
ほかにも、平泳ぎの選手は膝(ひざ)に痛みを抱えることがあります。



整形外科を受診する目安は、1~2週間続く痛み

肩はもちろんのこと、特に腰の痛みは、早期発見・早期治療が大切です。
しかし、子どもは痛みを訴えなかったり、痛みを痛みとして感知できていなかったりすることがあります。そこで保護者は、ときどき「どこか痛くない?」と聞くようにしてください。
関節の痛みのほとんどは、練習中ではなく、練習が終わったあとに起きます。練習後、お子さんの関節の痛みが1~2週間連続して続くようなら、整形外科を受診しましょう。子どもの関節の痛みは、早期発見ができれば、さほど心配する必要はありません。しかし、素人判断は禁物です。専門医による正しい診断と適切な治療を受けましょう。



子どもに多い「飛び込み」事故

故障ではなく「事故」で、保護者にぜひ知っておいてほしいのが「飛び込み事故」です。これは、子ども同士がプールで遊んでいるときに起きやすい事故です。
ポイントは入水角度です。水面に対して30度以上の深い角度で飛び込むと、プールの床に頭が直撃してしまうことがあります。飛び込み事故は、頚椎(けいつい)や頚髄(けいずい)を損傷したり、死亡したりと、取り返しのつかない事態を一瞬にして招きます。保護者はお子さんに、飛び込みが深刻な事故につながること、指導者のいないところでは飛び込みをしないことをしっかりと話し、注意を促してください。

さて、ここまでスイミングにおけるスポーツ障害についてご紹介してきましたが、子どものときのほうが、補助輪なし自転車に早く乗れるようになるのと同じで、スイミングも子ども時代に始めることで、習得がしやすくなります。こうして、子どものときに身に付けた「泳ぎの感覚」は、生涯にわたって忘れることなく、一生泳ぐことを楽しむことができ、健康作りにも役に立ちます。
保護者は、大きな故障や事故を予防しつつ、お子さんのスイミングをサポートしてください。たまに「どこか痛くない?」と聞くことを忘れずに!

次回はスイミングのスポーツ障害を予防するために、保護者が知っておきたい基礎知識をお届けします。


プロフィール


金岡恒治

早稲田大学スポーツ科学学術院教授。医学博士。筑波大学医学専門学群卒。整形外科医として臨床に従事後、2012(平成24)年より現職。シドニー五輪から水泳競技チームドクター、ロンドン五輪ではJOC本部ドクターを務める。日本水泳連盟医事委員長。

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