2016/04/08

[第4回] タブレットを家庭に持ち帰り、主体的に自主学習に取り組む(実践を振り返って) [2/3]

1.学校の様子

地域や学校の様子をお聞かせください。
 土屋:本校は、住宅地の開発に伴い、2003年4月、近隣の2つの小学校から分離する形で開校しました。当初、児童数は380名ほどで13学級でしたが、2015年度は550名ほどで、18学級に増加しています。宅地開発が進み、他地域から移り住む方たちが増える一方で、学校周辺には田畑もあり、のんびりとした雰囲気の地域です。子どもたちは全体的に素直で、もう少し競争心がほしいというのが教員たちの思いです。保護者の教育に対する熱意は強く、通塾率は比較的高い状況です。
ICT機器はどのような活用状況でしたか。
 土屋:開校当初からパソコンルームに40台ほどのデスクトップ型パソコンがあるほか、徐々に、8台のタブレット、6台の実物投影機、各学年1台の大型テレビや電子黒板などが整備されました。ICTを活用した学習に関しては、普通の学校と変わらなかったと思います。
 家髙:授業では、理科や社会でDVDを視聴するほか、実物投影機を用いて分度器や彫刻刀の使い方を示すといった活用が多かったです。iPadが学校に来て、一人一台環境になってからは、「まなみっけ」の取り組み以外にも、調べ学習に用いたり、動画教材の視聴に使うなどしました。

2.「まなみっけ」の実践

従来の家庭学習の課題と、「まなみっけ」の実践を通して感じたことをお話ください。
 家髙:6年生は、5年生4月から、家庭学習の習慣化を目指し、宿題とは別に自主学習に取り組むよう指導していました。中学生になると、1日1ページの自主学習が必要になると聞いていましたので、毎日、宿題に30分間取り組み、さらに40分間の自主学習を行い、合計70分間、机に向かうことを目標と話をしてきました。自主学習ノートの提出は原則として任意ですが、できるだけ提出するように子どもたちに働きかけてきました。当初は積極的に取り組む姿が見られましたが、5年生の1年間を通して見ると、「家庭学習が定着した」と言える児童は一握りです。また、日記を書いたり、興味のあることを調べたりと、いろいろな学習に取り組むことを期待しましたが、何に取り組めばよいかわからない児童も多く、どうすれば深めていけるのかも課題でした。ただ、自主学習の深まりにも段階があり、漢字や計算のドリル学習から、自分の興味や課題に応じてテーマを設定する学習へと広がっていくことが、熱心な児童の取り組みからわかってきました。そのような課題があったため、6年生になって「まなみっけ」の手法を知り、「タブレットが子どもたちにとって、よい助っ人になるのではないか」と思いました。
 田牧:同感です。私は、家庭学習のヒントにしてほしいと思い、手本にしてほしい自学自習ノートを紹介していました。しかし、帰りの会などで週1回、数人分を紹介する程度だったため、実際にそれをまねする児童はごくわずかでした。ですから、タブレットでクラス全員の取り組みを共有するようになれば、学習内容の幅が広がるのではないかと期待しました。
 乙部:初めてタブレットに触るという子どももいましたが、大半の子どもが家庭でタブレットや保護者のスマートフォンなどを使っています。授業で使うのは初めてでしたが、iPadや初めてのアプリケーションもすぐに使いこなしていました。子どもの順応性の高さに、改めて驚かされました。
 家髙:1期の取り組みでは、家庭学習の回数は増えました。「新しい機器を使いたい」という気持ちも強かったと思いますが、自分が家でやってきたことをみんなで共有できることが、楽しかったのだと思います。しかし、「まなみっけ」が終った後は、徐々に提出の回数が減り、家庭学習が定着したとまでは言えませんでした。
 田牧:今回の実践は、子ども達にとって家庭学習に前向きに取り組むきっかけになったと思います。自分の取り組みが友だちから見られるため、もともと自学自習ノートに意欲的だった子どもは「自分のノートを見てほしい」と思い、逆に、消極的だった子どもは「自分もやらなければ」という気持ちが強まっていたようでした。さらに、友だちのノートを見て、「こんな勉強をすればよいのか」と気づいて学習が広がりました。
 家髙:私たちが紹介するノートは、当然ながら教員の視点で選びます。しかし、タブレットを通して学習が広がっていく様子を見ていると、教員とは別の、子どもならではの視点でノートを見て、「これなら自分にもできそうだ」などと発見し、自分の学習に活かそうとする児童が多いことに気付きました。
2期では子どもの学習姿勢や家庭学習の内容にどのような変化が見られましたか。
 乙部:特に、家庭にタブレットを持ち帰った2期では、明らかに学習内容の幅が広がっていました。ノートだと提出できない塾や通信教材の学習や、家庭科の学習として、パン作りや掃除の様子を撮影したり、読んだ本の表紙を撮影して紹介したり、いろいろなスタイルが見られるようになりました。ノートという枠に捉われなくなり、学習をしたその場で撮影ができるので、学習と捉えられるものの自由度が広がったからでしょう。コミュニケーションを取りながら学ぼうとする姿も見られ「友だちにこれを見せたい」という気持ちも強まったと思います。
 田牧:2期の実践では、自由度が広まったためか、行事などの事情がない期間では提出回数が明らかに増えました。そして、終わった後に意識が継続している子どももいて、クラスで5人ほどですが、本当の意味での自主学習ができつつあると感じます。例えば、「あさってに漢字のテストをします」と伝えたら、その内容を自主学習ノートで取り組んでいる子どももいました。自分に必要な学習を考えられるようになってきたのでしょう。また、「人に見せる」という意識が高まり、授業中に書くノートも見やすくなった子どもが目立ちます。
 乙部:2期が終わった後ですが、自主学習ノートに、家庭のカメラで撮影して、印刷した画像や、新聞・雑誌のコピーなどを張るようになった子どももいます。表現方法や記録の残し方にも工夫が見られます。
 家髙:1期2期両方で行った「ふりかえりの会」で、クラス全員で「まなみっけ」の内容を共有したことも、効果が大きかったと思います。普段、友だちのノートをどれくらい見ているのかは、子どもに任せているため個人差があります。「ふりかえりの会」を行う事で、iPad上に一覧表示された友だちの取り組みを友だちと感想を言い合いながら、しっかりと確認し、自分の学習に活かしていく習慣ができていました。