問題の模範解答とは違う書き方をすることが多い[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小6男子(性格:大ざっぱ)のお母さま


質問

文章を読んで内容を理解できているようですが、問題の模範解答とは違う書き方をすることが多いです。多分、自分の感じた言葉のままに書くので文章にない表現になっているのだと思いますが、内容が違わない場合はどのように指導すればよいですか?


小泉先生のアドバイス

「本文の表現」に沿った答案作りが何と言っても原則。

ここでは、3つの表現について考えてみます。それは、「本文の表現」「模範解答の表現」「生徒の表現(お子さまの表現)」の3種類です。まず、記述問題の答案を書く場合、「本文の表現」を使って書くのが原則です。もちろん、間接的な心情表現は直接的なものになおす必要はあります。また、答案の字数制限に比べて本文の内容が多い場合などは、その箇所をまとめるために、言い換えが必要になるでしょう。しかしそれらも含めて、できるだけ「本文の表現」を生かした答案づくりを心掛けるべきです。なぜなら、「本文の表現」を下手に言い換えると違った意味になる可能性があるからです。

問題文の筆者は、より適切な表現を使って文章を書くプロだと考えて良いでしょう。そのプロで大人の文章を言い換えることは、小学生にはとても難しい作業になるはずです。生徒が自分では適切に言い換えたつもりでも、違った意味になったり、変に限定してしまったりと、採点者にケチをつけられて減点される理由を与えてしまう可能性が高くなるのです。
たとえば、本文では「独創的な発想によってほとんどあらゆる必要品が作られてきた」という箇所を使うときに、「多くの独創的な必要品」としたり、「独創的な発想によるあらゆる必要品」としたりすると減点される可能性があります。なぜなら、前者の場合は作られた必要品が独創的とは限らないし、後者の場合はすべてではないので「あらゆる」は正確ではないからです。非常に単純ですが、しかし、ついやってしまいがちなミスです。こうした間違いを犯さないために、普段から「本文の表現」をなるべく変えずに、そのまま使う習慣をつけることをおすすめします。

それでは、今回のように内容は同じようだが「模範解答の表現」と「お子さまの表現」が違う場合はどうでしょうか。基本的に、「模範解答の表現」は「本文の表現」を生かしたものになっていると思います。字数制限などにより、言い換えられている場合もあるとは思いますが、それを含めて本文の内容に沿っているでしょう。その場合は、たとえ内容が同じでも、「模範解答の表現(すなわち『本文の表現』)」をお手本にするようにしてください。
しかし、なかなかなおさない場合もあるでしょう。そのまま書くのが面倒だからとか、自分の書き方のほうがすっきりしているからなどの理由から、表現を変えようとしない場合です。そんな時は、お子さまの書いた表現の中から、上記のような「言い過ぎている」とか「意味が違ってきている」箇所を見つけて、それで減点されることや、言い換えがいかに難しいかを納得させてください。
また、実際に減点された時に、タイミングを見計らって説得するほうが効果的かもしれません。自分の不利益になることが理解できれば、少しずつでもなおしていくと思います。

ただし、「模範解答の表現」と「本文の表現」がかなり違っていて、しかも「お子さまの表現」のほうが「本文の表現」に沿ったものである場合は、少し考える必要があります。模範解答は、複数の先生が、時間をかけて作ることが多いと思います。それこそ、練りに練った完成された作品のようなものである場合もあります。「本文の表現」を言い換えて、すばらしい解答に仕上げていることも少なくありません。しかし、そんな場合は「模範解答の表現」はあくまでお手本であって、「生徒の表現(ただし、『本文の表現』に沿ったもの)」でよしとしたほうが良いと思います。
受験生にとって、答案は限られた時間の中で作るものです。答案が完成されたものであることは重要ですが、時間内に作れなければ本末転倒です。たとえ見栄えが悪くても、完璧な答案ではなくても、合格点のとれる答案をいつでも作れるようになっていることが大切です。特に、本番の試験までもう時間がないお子さま、あるいは「完成された模範解答」を強いることで記述の答案を書くことを躊躇(ちゅうちょ)してしまうようなお子さまの場合は注意すべきです。模範解答を目標にするのは大切ですが、「本文の表現」に沿った答案作りが何と言っても原則だと思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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