質問しても答えない子どもへの関わり方とは[やる気を引き出すコーチング]
「やっぱり子どもに考えさせることは大切だと思って、質問するように心がけているのですが、『わからない』『めんどうくさい』などと言われて、答えが返ってこないことが多いです。つい、こちらから、いろいろな例を出したり、最後には答えを言ってしまったりの繰り返しです。答えられない子どもには、どんな関わり方をしたらよいでしょうか?」
かなりの頻度で、保護者の方々からいただくご質問なので、今回、こちらでも取りあげてみることにしました。「今まで、『自分で考えてみる機会』よりも『親の答え』を与えられ続けてきた結果なのです」と言っても仕方がないので、「コーチならどうするのか?」をヒントにしていただければ幸いです。今からでもまったく遅くはありません。
「受容」+「質問」を繰り返す
こういう会話、多くないですか?
「ねえ、今日、晩ごはん、何が良い?」
「カレー!」
「カレーはダメ。昨日もカレーだったでしょ!」
質問されたので答えたのに、「それはダメ!」と言われてしまう経験を、小さいころから繰り返し積んでいると、子どもは、しだいに「わからない」と言うようになります。答えても否定されると、「どうせ言っても言い返されるだけ。答えないほうがめんどうくさくない」という条件反射が刷り込まれてしまうからです。
だからと言って、「相手の言い分に全部賛同してください」と言っているわけではありません。コーチングでは、「受容」を頻繁に使います。「賛同」と「受容」は違います。「賛同」とは、「そうだね! その通りだと思うよ」と相手の意見に賛成することですが、「受容」は、「そう思ったんだね」「そんなことがあったんだね」と、相手が言ったことをただ受けとめるだけです。
高校生との就職カウンセリングの場で、将来、何をしたいのかまったく答えられない生徒にこんな質問をしたことがあります。
「じゃあ、何でもやれるとしたら、何をやりたい?」
「何でも良いんだったら? ……一生遊んで暮らしたい」
たしかに、この答えに、「それは良いことだね!」と賛同することは、就職カウンセラーとしてはできません。でも、「一生遊んで暮らしたいって思ってるんだね」と、相手が言ったことをいったん受けとめることはできます。それはダメ、それは良いと評価をせず、ただ受けとめるだけです。そして、受容のあとに、
「たとえば、どんなことをして遊びたいの?」
と、質問を繰り返します。
「わかんない」
「わかんないんだ(受容)。こんなことができたら良いなって思うことないかな?(質問)」
「ゲーム……」
「ゲームね(受容)。どんなゲーム?(質問)」
こんな感じです。
「ほかには何したい? ゲームのほかに何かない?」
受容しながら質問を繰り返すうちに、
「やっぱ、遊んでばっかじゃダメっすよね」
と相手が自分で考え始めました。
「わからない」という答えがあってもOKです。「わからないんだね」といったん受容してあげてください。場合によっては、日を置いて、また同じ質問を繰り返してみてください。その繰り返しの中で、何を言っても受けとってもらえると思えば、しだいに自分で考える習慣がついてきます。
こちらの「答え」は手放す
「子どもに質問をして答えを引き出せても、わたしが思っているような答えではなく、自分の都合の良いような答えをします。それを認めてもよいのでしょうか?」という質問をいただくこともあります。たいへん恐縮なのですが、こんなふうに思っていらっしゃる限り、お子さんはやる気になれないと思います。
「わたしが思っているような答えでないとダメ」、つまり、「自分の思い通りに子どもを動かしたい」と思っている時点で、お子さんは、「じゃあ、いちいち質問するなよ」と思ってしまいます。大人でも、こちらの気持ちを受けとらないまま、ただ、自分の思い通りにさせようとする人の言うことなど、聞く気になれないでしょう。
認めるのではなく、こんな時も、まず受容です。そして、こちらが、自分の答えを持たないで質問します。「そうか、そう考えたんだね。それをするとどうなるのかな?」などです。どうか、お子さんの前進のために、「わからない」「めんどうくさい」で、大人もすぐにあきらめないでいただきたいなと思います。