合格後、塾での先取り学習は必要?[中学受験]

中学校に合格されたかたから、次のような相談がありました。

(質問)
塾で半年分の先取り学習が入学式まで続きます。一方、話によると、学校から入学式までに終わらせるようにとかなりの宿題が出されるそうです。春休みは、週3回電車で片道1時間半かけて塾へ行き、塾のない日は予習に追われ、いつ学校の宿題に手をつけられるのかと心配です。合格してもハードなスケジュールから抜けることなく乗り越えるべきなのでしょうか?


逆に、合格後はまったく勉強をしなくなって心配になったという次のような相談もあります。

(質問)
合格発表後より何も勉強しません。最初は自由時間が持ててよかったね、と言っていましたが、10日も過ぎ、いい加減そろそろ何か勉強をしてほしいと思います。中学校の入学ガイダンスで課題が与えられるまで何をさせたらよいでしょうか?


(回答)
受験が終わったのだから、思いっきり遊びたいという子どもの気持ちはよくわかります。しかし、塾がなければまったく勉強をしなくなるというのは残念ですし、先が思いやられます。中学校入学後はしだいに高いレベルの学習をしなければならなくなるので、せっかく受験で身につけた勉強の習慣がなくなると、途中から苦しいことになります。「学校から入学式までに終わらせるようにとかなりの宿題が出される」というのは、合格後にまったく勉強をしなくなり、勉強の習慣がなくなって中学校の授業についていけなくなる生徒がいるからではないかと思います。

この時期に勉強する必要はありますが、「先取り学習」である必要はないと思います。基礎学力が不十分な生徒であれば、中学校での授業についていくための「基礎学力の学習」をすべきだと思います。また、入学前に学校で出される宿題も入学後の授業についていけるだけの基礎学力を中心とした復習を重視する学校が多いと思います。通常「先取り学習」の目的は、中学校入学後の授業に円滑に対応するためです。中学校からの学習内容は、小学校の学習とは比較できないくらい正確な知識を要求されます。また、中学校の学校生活に慣れるのも大変な時期に勉強が難しくなるので、4~7月は負担が大きくなるわけです。その負担を少しでも減らすためという目的で、「先取り学習」をするわけでしょうが、合格後の春休みをつぶしてまでというのは少し酷な気がします。

何年間も受験勉強をしてきて、精神的に疲れ切っているなかで、ハードな学習は勉強に対する嫌悪感を持たせるだけです。嫌悪感が大きくなりすぎると、本人は勉強しなければならないと思ってもできなくなり、不登校や成績不振の原因となります。むしろ入学先の学校の先生によく事情を聞き、ご相談に乗ってもらうべきでしょう。恐らく学校側は「その必要はない」と言うでしょうが、客観的に見て英語と数学の素地は作っておいたほうがよいですね。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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