一人っ子のお悩み解決します!【後編】こんなときどうする? 育て方のポイント

「一人っ子だからワガママで人付き合いが下手」というのは根拠がないようですが、とはいえ保護者のかたは心配ごとも多いと思います。そこで、前回に引き続き、明治大学文学部教授で教育カウンセラーでもある諸富祥彦先生に、具体的なシーン別に一人っ子の育て方のポイントをお答えいただきました。

一人っ子のお悩み解決します!【後編】こんなときどうする? 育て方のポイント


Q.一人っ子のせいか独占欲が強く、物の貸し借りが苦手です。

A. 一人っ子だからといって、譲り合いが苦手という訳ではありません。貸してあげたほうがよいのはわかっていますが、その技術をまだ身に付けていないだけなのです。こうした場合、保護者がコミュニケーションのモデルを示してあげるとよいと思います。たとえば、公園の砂場で遊んでいるときに、お友達から「スコップを貸して」と言われ、お子さんがもじもじしてスコップをうまく貸してあげられない様子でしたら、保護者のかたが「ママが貸してあげようかな」とモデルを見せてあげるのです。その姿から、お子さんは「お友達におもちゃを貸す」という行動を学んでいきます。お子さんはおもちゃを返してもらえないことを心配している場合も多いので、「そろそろスコップを返してくれるかな」とお友達に声を掛けてあげるとよいでしょう。

Q. 一人っ子でも強い子に育てるにはどうしたらよいでしょうか。

A. 一人っ子だからといって、厳しくしつけるのは逆効果です。学校でけんかをして泣いて帰ってくることもあるでしょう。そんなとき「どうして泣いてばかりいるの」「めそめそしないの!」などと言ってしまうと、お子さんは自分の気持ちをぶつけるところがなくなってしまいます。保護者のかたが安全基地になってあげて、とにかくつらい気持ちを受け止めてあげましょう。しっかり甘えを受け止めてあげたほうが、心にエネルギーがたまってきて、またがんばろうという前向きな気持ちになっていきます。

Q. 父親、祖父母が甘やかしすぎるのですが、どうしたらよいでしょうか。

A. お忙しいお父さんの場合は、お子さんと接する時間が限られているからしかたがない部分もあるかと思いますので、どうしてもゆずれない部分以外は少し大目に見てあげてほしいですね。祖父母には、「甘やかさないでほしい」と言っても、何をどうすればよいのかなかなか伝わりません。具体的にどうすればよいかを伝えるとよいのではないでしょうか。たとえば、おやつを与えすぎてしまうなら「おやつは少なめに」と抽象的な表現ではなく、「今日のおやつは3時にヨーグルトとみかんをお願いします」と、具体的に伝えましょう。

Q. 中学生になった一人っ子の我が子が親との距離を置きはじめ、少し寂しいです。

A. 思春期に入ると、子どもは秘密を持ちたくなる年頃ですから、学校であったことを根掘り葉掘り聞くのではなく、そっと見守る側へとシフトしていきましょう。いくらお子さんのことを知りたいからといって、携帯やパソコンのメールを盗み見るといったことは避けましょう。修復できないくらい大きな傷になってしまう可能性があります。
10歳~15歳くらいまでの時期は子どもの心がいちばん不安定な時期です。講演会などでは、乳幼児期よりもむしろできるだけお子さんとの時間をつくってくださいと申し上げています。頼る場所がないと、悩みを打ちあけられず不登校になってしまうこともあります。会話がないとしても、困ったときにすぐ相談できるという状況にあってほしいと思います。

Q. 一人っ子の子育てで特に注意すべきことはありますか。

A. 一人っ子だと保護者のイライラを一人で受け止めなければいけないので、お子さんがストレスを抱えがちになります。特に、母娘関係だとこうしたケースが多いようです。娘のことは何でもわかっていると思って何でも指示を出したり、娘に夫の愚痴を毎日のように言ったりしてしまうことがあります。そうするとお子さんは常に自分の気持ちを抑えるようになってしまい、自分らしく生きることができなくなってしまいます。
お子さんと保護者は別人格です。お子さんの幸せを望むなら、保護者自身が自分の人生を楽しみましょう。その姿を見て、お子さんも自分も人生を楽しもうと思えるはずです。映画でもファッションでもかまいません。趣味を楽しんでほしいと思います。

◆諸富先生からのメッセージ◆
一人っ子を持つ保護者だけでなく、どのご家庭にも言えることなのですが、喜怒哀楽のある家庭、家族が弱音を言える家庭を目指してほしいと思います。子どもの前で怒ったり泣いたりするのはよくないと考える必要はありません。お母さんがお父さんに相談したり、お父さんがお母さんに会社の愚痴を言ったりしている姿を見て、「家庭は自分をさらけ出せる場所なんだ」ということを感じられると、お子さんはうれしいことだけでなく、つらいことや嫌なことも話すことができます。そして、保護者に相談することで心にパワーを充電できるようになっていくはずです。


プロフィール


諸富祥彦

明治大学文学部教授。教育カウンセラー。教育学博士。臨床心理士。全国で保護者向けの講演を実施。『ひとりっ子の育て方』『男の子の育て方』『女の子の育て方』 (WAVE出版)ほか、教育・心理関係の著書が100冊を超える。

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