
小学校の「スタートカリキュラム」って?幼児期の学びを教科へ
小学校低学年のお子さんをお持ちのかたなら、「スタートカリキュラム」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。入学当初に、生活科を中心として、各教科の単元を関連させながら学習を進めるものです。
これまでは解説書や手引きで実施が勧められていただけですが、2020年度から全面実施された小学校の新学習指導要領では、スタートカリキュラムの編成・実施が明記されました。どんな意義があるのでしょうか。
解説書から指導要領に格上げ
幼稚園や保育所、認定こども園といった「幼児期の教育」と、小学校以降の教育では、言うまでもなく授業の形態や勉強の仕方が全然違っています。幼児期の教育が遊びや生活を通して総合的に学んでいくものであるのに対して、小学校以降では、教科などの学習内容を系統的に学んでいくものだからです。
しかし子どもたちは、小学校に入学したとたん、環境の変化に少なからず戸惑い、小学校に適応できない「小1プロブレム」といった問題も起こっています。
そこで以前の指導要領(2008年告示、11年度から全面実施)の下では、生活科の解説書で「スタートカリキュラム」の実施が推奨され、国立教育政策研究所もスタートカリキュラムを詳しく説明した手引書を発行しました。ただ、導入するかどうかは各小学校の判断に任されたままです。
改訂された新指導要領は、幼小、小中、中高、高大と、学校間の接続も重視し、「縦のつながり」で資質・能力を育成しようとしているのも大きな特徴の一つです。そこで、幼小接続の有効な手法であるスタートカリキュラムの規定を、「合科的・関連的な指導や弾力的な時間割の設定」という言い方で、指導要領に格上げしました。

「社会に開かれた教育課程」の先駆けに
そもそも生活科が1989年告示の指導要領(92年度から全面実施)で創設されたのも、幼稚園教育との円滑な接続を図るためでした。当時は低学年の社会科・理科を削ったことに批判もありましたが、遊びや生活を通して学んだことを、国語や算数などの他教科や、中学年以降の社会科・理科につなげ、より深い学びにするという重要な役割を果たしている教科です。
とりわけ今回の改訂では、幼稚園教育要領で、幼児期の終わりにまで育ってほしい「10の姿」(<1>健康な心と体<2>自立心<3>協同性<4>道徳性・規範意識の芽生え<5>社会生活との関わり<6>思考力の芽生え<7>自然との関わり・生命尊重<8>数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚<9>言葉による伝え合い<10>豊かな感性と表現)を明確化し、それらを小学校の各教科にグラデーションのように生かすことで、幼小接続によって「資質・能力の三つの柱」(知識・技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等)を育成することを目指しています。スタートカリキュラムの重要性が、ますます高まっています。
ところで今回の改訂では、「社会に開かれた教育課程」も打ち出しています。育てたい資質・能力を保護者や地域社会などと共有し、共に子どもを育てていこうという考え方です。一方、スタートカリキュラムでは、「期待する児童の姿」を明らかにすることが求められます。まさに社会に開かれた教育課程(カリキュラム)の先駆けとして、保護者も関心を持ちたいものです。
(筆者:渡辺敦司)
プロフィール
- 渡辺敦司
- 1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。
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