自分の考えを与えられた字数でうまく答えられません[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


相談:

小6女子(性格:神経質・弱気なタイプ)のお母さま


【質問】

記述問題を解く時、自分の考えを与えられた字数でうまく答えられません。そのため、考えているうちに時間がなくなってしまいます。


【回答】

書き始める前に、「何」を「どこ」に「どのくらい」書くかを決めておく。

「考えているうちに時間がなくなってしまう」のは、次に何をやるべきかが決まっていないからでしょう。問題文や問いを読み、自分の考えがだいたいまとまったら、次は「何」を「どこ」に「どのくらい」書くかを考えるように助言してください。記述問題の構造は、「理由+相手+答えの中心+文末」というのが一般的ですから、「何」を「どこ」に書くのかは、書くべき内容が決まれば自動的に決まります。あとは「どのくらい」書くかですが、これは解答欄にだいたいの目安を付けてから書き始めればよいでしょう。

たとえば、「気持ち」を問われる問題の場合、文末は「~気持ち。」で4文字です。答えの中心である気持ちは、たとえば「悲しい」であれば3文字になります。相手は「お母さん」であれば4文字ですから、合計で11字になります。ここで字数制限が30字以内というのであれば、19字以内で理由を書くことになります。理由は本文中にあるはずですから、本文を読んでその字数内で理由が書けることを確認したら、おもむろに書き始めるのです。このようにやるべきことが決まっていると、記述問題の答案を仕上げる作業のスピードは大幅にアップします。

■きっちりしたい気持ちが、書き始めることをためらわせる

お子さまの場合、性格的に神経質でものごとをきっちりやりたいという気持ちが強いと想像します。ですから、上記のように具体的な数字を示すと、字数をきっちり数え始めるかもしれません。しかし、制限字数が30字ならまだしも、50字、70字、100字となると字数を数えるのにも時間がかかります。時間を節約するためには、字数をきっちり数えるというよりも解答欄のだいたいここまで書くという目分量で測るやり方のほうがよいでしょう。たとえば解答欄がマス目で与えられている場合は、「文末」、「答えの中心」、「相手」の順でだいたいどのくらい書くかを決めて目印を付けていけばよいでしょう(図1参照)。そうすることで、書いている内容が多すぎるのか、あるいは少なすぎるのかを常に意識して書き進めることができます。30字程度の記述問題なら、最初の「理由」が予定の字数より少ないくらいに収まれば、あとの答案は順調に仕上がることでしょう。また、字数制限が30字より多い記述問題の場合でも、目印を意識することで、途中で字数を調整することが可能になります。


■書いては消し、書いては消し……は時間のムダ

几帳面なお子さまによく見られるのは、少し書いては消し、少し書いては消し、というくり返しです。おそらく、書いてある内容が気にくわない、きっちりとした答案に仕上げたいという気持ちが強いために、このような行動になるのだと思います。きっちりしたいという気持ちはわかりますが、速く仕上げることも大切なポイントです。書いたものを全部消すのではなく、どうしたら消す量を最小限にできるかも考えるべきでしょう。たとえば、最後のほうまできて、どうしても書ききれないことが判明する。こうなる前に何らかの手を打っておくべきでしたが、ここに至っても全部消す以外のやり方はあるはずです。

たとえば、「悲しい気持ちになったから。(13字)」と書く予定を、「悲しくなったから。(9字)」にすればよいでしょう。それでもまだダメなら、「悲しかったから。(8字)」でもよいのです。それぞれの言葉の意味合いは少しずつ違ってくる可能性はありますが、お子さまの場合は、“きっちり”よりも、まずは“時間内に”を大切にするほうがよいと思います。また、字数不足の時は、より詳しく説明することで、字数を増やすことは可能です。たとえば「お母さん」というだけではなく、「やさしくていつも明るいお母さん」とすれば、11字も増やせます。詳しく説明する内容は本文になくては困りますし、ひとつの言葉の説明が妙に長いと文としてはバランスが悪くなるかもしれません。しかし、時間内に仕上げるということを優先するならば、バランスの悪さもあまり気にする必要はないと思います。

■まずは60点をめざす

記述問題では、完璧な答案を仕上げることはなかなかできません。誤字、脱字はもちろん、「て・に・を・は」の誤りでもすぐに減点されます。もちろん、書いてある内容が違っていたり、あるいは要素が足りなかったりすれば大きく点をひかれるでしょう。また、内容的に方向性はまちがっていないが、あまりにも表現が幼かったり、粗雑であったりすればそこでも減点の対象になるでしょう。たとえば「嫉妬する気持ち」と書くべきところ、「嫌な気持ち」では減点されても仕方がないのです。

このように完璧な答案を妨げる要因はいくつもありますが、それらを気にするあまり時間内に仕上げられないというのも困ります。お子さまの場合は特に、完璧をめざすという気持ちを少し抑え、まずは60点をとろうというくらいの気持ちで問題に臨まれるとよいと思います。そして、60点がとれるようになったら、80点、さらには100点をめざせばよいのです。このような気持ちの余裕も、「考えているうちに時間がなくなってしまうという状態から脱する1つのポイントだと思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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