子どもと過ごす夏 我が子が高校に入学したら、「子育てから卒業」[高校受験]

■我が子が高校に入学したら、「子育てから卒業」

受験生活そのものではなく、長いスパンでのこれからのお子さまの人生につながるお話をしましょう。
私は高校受験だけでなく、多種多様な受験にかかわる仕事をしています。そこで、ここ1、2か月にかかわったことを取り上げ、そこから得たこと、考えたことを述べていきます。

6月のある日曜日、「東京私立男子中学校フェスタ」というイベントが、芝中学校・高等学校でありました。おもに中学受験の保護者が対象でしたが、高校受験の保護者にも参考になるお話がありましたので、ご紹介しましょう。

私はこのイベントに毎年出かけていますが、今年は麻布学園・開成学園・武蔵高等学校中学校という3校の校長によるパネルディスカッションが目玉でした。この3校は、東京で男子校の御三家といわれている伝統校で、3校の校長が顔をそろえるのはめずらしいことです。司会は、今年の実行委員長である本郷中学校・高等学校の校長先生で、テーマは「男子教育について」。

さすがに、とてもおもしろいパネルディスカッションでした。私は、よく保護者のかた向けに子育ての講演をしているので、とても参考になりました。昨年、ある受験情報誌に「『手をかける』ことは『足を引っ張る』こと」という文章を書きましたが、パネルディスカッションで出てくるお話に、その原稿のタイトルと重なる部分がとても多かったのです。先生がたのお話は、長年の経験に裏打ちされているだけに、含蓄がありました。「今の男の子に不足している部分」「母親に心してほしいこと」「校長として意識していること」……。女子にも参考になると思いますので、私が書き留めた、印象に残ったフレーズをいくつかご紹介します。

●入学してすぐに大学受験のことを言うと、心が折れてしまう
●入学式の時、生徒には「入学おめでとう」、母親には「子育てご卒業おめでとうございます」と言う
●勉強が遅れていても、熱中するものがあればOK
●手を出さない。口を出さない。しかし、目で見ている
●あえて危険なことをさせる。たとえば、海外研修では、海外の提携校に生徒だけで出す
●覇気・意欲・内からわくエネルギーを育てたい

これらの学校の生徒だから、たまたまできるといえるかもしれませんが、どのような子どもにも共通する部分があるのではないでしょうか。

最近は、高校というと、「大学合格力」ばかりが注目される風潮にありますが、本来学校教育というものはいろいろな側面があり、またこのようにバラエティーに富んでいるものなのです。お子さまの学校選びでも、「偏差値」や「大学合格実績」といった数字ではなく、学校ごとの個性、特色、カラーに注目されてはどうでしょう。

そして、お子さまが高校に入学された暁には、子どもに熱心にかかわることをやめ、「子育てから卒業」されてはいかがでしょうか。


プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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