物語文が極端に苦手で、文章を分析せずに自分に当てはめて考えているように思われます[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小6男子(性格:論理的)のお母さま


質問

物語文が苦手で、ひっかけと思われる選択肢を選んでしまいます。答えを見て、「ああ」と言うことはありますが、物語文が極端に苦手です。文章を分析するように言っても、自分に当てはめて考えているように思われます。何か良い解決方法はありますか?


小泉先生のアドバイス

まずいのは自分に当てはめて考えることではなく、本文から「根拠」を見つけないこと。

物語文を読んで登場人物の気持ちを考えるとき、「自分だったら」ということで見当違いな気持ちを思い浮かべてしまうことがあります。もっとひどくなると、自分で勝手に新しい物語を作ってしまう生徒さんもいます。こんなとき先生は「深読みするな」と言って注意します。読書が好きで、国語力がありそうなのに、「深読み」してしまう生徒も少なくありません。そのような生徒は、いままで読んできた物語を思い出して、今回読んだ物語文を当てはめてしまうのかもしれません。いくつかのストーリー展開を見本として持っていると、それに合わせて理解したほうが楽ですから、どうしてもそのようなパターンに当てはめがちになります。

このように「自分に当てはめて考える」とか「今まで読んできた物語に当てはめる」ことは確かに「深読み」につながる可能性はあるでしょう。でも、実はそれらがすべて悪いわけではないと思います。
たとえば、物語文の登場人物の気持ちを考える時、そのような状況において、≪自分だったらどう感じるか≫を考えることはヒントにはなります。可能性のひとつとして、たとえば「恥ずかしい(と自分なら感じる)」と推測して構わないのです。ただし、それだけではもちろん不十分です。登場人物の気持ちの≪確かな根拠≫となりそうな箇所を見つけて、果たして「恥ずかしい」という気持ちなのか、あるいはほかの気持ちなのかを判断するという試行錯誤が必要なのです。
ここでいう≪確かな根拠≫とは、常識的に根拠となり得る箇所を意味します。つまり、ほとんどの人が納得できる、「このような『行動』や『言動』は、このような『気持ち』であるはず」という約束ごとに従っているということです。そして、少なくとも試験問題では、明確な根拠がある箇所が問われているはずです。なぜなら、それこそ誰にとっても納得できる根拠でなければ試験問題にならないからです。

それでは、≪確かな根拠≫を探すにはどうしたら良いでしょうか。まずは、傍線部やその前後を探してみましょう。たとえば気持ちの根拠となる、「頭をかきながら」や「顔を赤らめた」といった記述があったら、「恥ずかしい」という気持ちは正しいと言えそうです。
あるいは、傍線部からもっと離れたところや、その場面の雰囲気やそれこそ物語文全体から判断する必要がある場合もあります。たとえば、とても和やかで楽しげな雰囲気の場面で登場人物が「まったく、もう!」と言ったら、それは「腹立たしい」などの≪悪い気持ち≫よりも、「微笑ましい」などの≪良い気持ち≫と考えるべきだということです。

さて、根拠に基づいて答えた「気持ち」なのに、それでも間違えてしまうことはあります。原因としては、根拠探しが上手にできなかった場合が多いでしょうが、間接的な心情表現や「気持ち」自体を理解できなかったとも考えられます。この「気持ち」自体を理解できないというのは、たとえば「呆然とする」という気持ちとはどのようなものなのか、どのような時にそのような気持ちになるかがわからないということです。そのような場合は、具体的な例を示しながら説明してあげましょう。
複雑な気持ちやそれを表す心情表現を一つひとつ教えることは、経験の少ない子どもたちには必要なことだと思います。たとえ実体験ではなくとも、それらを読書や問題文を読むことで疑似的に体験することは、国語力のアップに役立ちます。

以上、物語文を読む時にまずいのは、自分に当てはめて考えることではなく、本文から「確かな根拠」を見つけないことであると述べました。お子さまはとても論理的な性格なようですから、「確かな根拠」を探すというやり方に慣れれば、物語文に対する苦手もきっと克服できると思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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