子どもは文化祭で学校を見極められるか[中学受験]
中学受験では、子どもが第1志望校を決定するご家庭が60%を超えており、志望校の候補となる学校の文化祭に子どもを連れて行って、第1志望校を選定させる親が多くなってきているが、本当に子どもは、自分の考えで選定できるのか疑問がある。保護者が学校の選定をするときは、学校の教育方針や校風だけではなく、学校の雰囲気を在校生や教師から評価し、「我が子に合った学校かどうか」「入学後の学校生活がイメージできるかどうか」など客観的な評価に加え、主観的な感覚で最終的に判断する。
大人にとっても難しい学校の選定を、小学生の子どもにできるのかという疑問があった。そこで、中学校に入学したばかりの生徒と保護者の両方にアンケートを行い、「入学前に、在籍校の文化祭に参加したとき、下記確認事項はどれだけ(自分の感覚に)適合しましたか?」という質問をした。保護者には11個の事項を提示したが、「学校全体の活力・活気」が「ピッタリ適合」したという人は59%で最も多く、「在校生の内面の印象」と「ほかの保護者の外面的な礼儀・服装・言葉づかい・態度など」は24%で最も少なかった。
子どもにはわかりやすいような表現で10個の事項を提示したが、「学校は楽しそうか」が「ピッタリ適合」したという子どもは51%で最も多く、「自分と同じタイプの在校生は多いか」と「自分の性格・資質を向上するうえでプラスか」が42%で最も少なかった。
子どもが「ピッタリ適合」を選択した割合はどの事項でも保護者に比べて高く、事項間に大きな差はなかった。この現象は、子どもは質問の意味がよくわかっていないため肯定的な回答が全般的に高く、また差がつかないことが原因だと考えられる。裏付けとして、実際にデータを調べてみると、一人の子どもがどの質問にも同じ度合いの適合を示す傾向があった(すべての項目で「ピッタリ適合」を選択するなど)。これらのことから、大人は在籍している学校の良し悪しがわかっているが、子どもはわからないのでこのような現象が起こると考えられる。子どもが評価できないのは、このように評価する経験がないことと、評価するための比較する基準がないからではないだろうか。
しかし、経験や明確な基準が少ない子どもでも、好きか嫌いかは、瞬時に答えることができる。たぶん、文化祭に連れて行けば、理由は明確に述べられないにしても、自分の感覚でその学校が好きか嫌いかを答えることはできるだろう。つまり、子どもには、経験や明確な基準が少ないので学校の論理的評価はできないが、感覚で自分に合った学校かどうかはわかるようだ。しかし、感覚だけで学校を選定させるのが不安であれば、いくつかの学校の文化祭を回って経験を積ませることもできる。さらに、前回のコラムでも話したように、文化祭で子どもに在校生と話をさせることや、小学生が参加できる学校生活がわかるイベントを体験させることで感じたことを志望校選定の基準とすることもできる。