「中高一貫校」への進学を決める「タイミング」と「必要な学費」
変化の激しいこれからの社会で活躍できる人材を育てるべく、2020年に始まる教育改革。知識を活用する力をはぐくむため、中学・高校での授業に「生徒参加型」のものが増えていくなど、大きな改革が行われる予定です。
そんななかで、平成25年度に450校だった中高一貫校は、平成28年度には595校に増加し、現在公立中高一貫校は45都道府県に設置されています(※1)。これは、教育改革という大きな変化に備え、保護者の「堅実な教育を受けさせたい」という心理が反映されたものとも言え、「中高一貫校」へのニーズの高まりが感じられます。
そこで今回は、「中高一貫校入学を決めるタイミング」「入学までに必要な費用」「公立・私立で入学までにかかる費用の差」についてお伝えしていきます。
中高一貫校入学を決めるタイミングは小学校高学年
中高一貫校への入学は、小学校高学年までに決定する人が多いと言われています。これは大手塾での「中高一貫校受検コース」などに、小学校高学年から始まるものが多いことからもわかります。特に、私立を目指す場合は小4から塾に通うケースも多いようです。
そもそも中高一貫校に通うためには、入学準備の期間も含めてかなりの費用がかかります。そのため、中高一貫校を視野に入れるかどうか、お悩みの人も多いかと思います。しかし、高い学費を払ってでも中高一貫校に通うメリットはたくさんあります。
たとえば、高校受験をする必要がなくなることがメリットの1つです。中学受験と高校受験では、受験範囲の広さが大きく変わってきます。高校受験に備える時間がなくなる分、自分の興味・関心を伸ばすことに時間を使うことができます。
なお、大学付属の中高一貫校に入れば、大学への内部進学の資格が与えられる場合があります。そのため、長い時間を自分のために使うことができます。そのような「安定志向」から、子どもを大学付属の中高一貫校に入れたいという声も多くなっています。
中高一貫校入学までに必要な費用について
では、実際に中高一貫校の入学までに必要な、平均的費用をご紹介します。
2016年の子育て世帯の平均年収は約683万円(※2)とされています。モデルケースとして、「世帯年収680万円・家族3人(父・母・小5の子1人)」の場合を例に見ていきましょう。
まず入学までに準備が必要な費用は、大きく分けて
①塾・家庭教師の費用
②受験費用
③事前準備物(制服・教科書など)の費用
④初年度入学費用(授業料・寄付金など)
の4種類です。これらにかかる費用を表で見ていきましょう。
このように、公立(都立)の場合は70.2~108.2万円、一般的な私立の場合は183~228.5万円、高額な私立の場合は218~298.5万円程度入学までに費用がかかる計算となります。また、夏季講習などの費用もかかってきます。塾や受験校の数によっても金額が変わってきますが、受験までに貯めておくべき金額は公立(都立)の場合85~125万円、私立の場合300万円以上見ておくといいでしょう。
これらの費用は、大学の入学費用と並行して用意することになります。基本的に、大学の入学費用は18歳までに1人あたり最低300万、理想は500万円程度を準備し、それまでの中・高の授業料や塾代は家計から捻出するのが望ましいと言われています。しかし中・高の塾代はかなりまとまった金額が必要になるため、大学の入学費用として積み立てる分とは別に、中・高の塾代についても事前にコツコツと貯めていくことが必要です。
また、仮に私立の中高一貫校を受験する場合は、小学4年生から塾などの教育施設に通うのが一般的です。その場合、小学4年生〜小学6年生までの塾代で200万円を超える費用がかかるため、こちらも別途早い時期からの貯蓄が必要です。
具体的には、子どもが小学校に入学したころから貯金をはじめるのが望ましいといえます。たとえば、お稽古ごとやレジャー費などを細かく見直せば、月に2万円程度は節約できる可能性があります。仮に小学校1~3年生の3年間、毎月2万円を貯め、年2回のボーナスからも毎回5万円程度貯蓄できれば、100万円程度は事前に準備できます。あとの100万円は同じように日々の生活費から捻出すれば、世帯年収680万円の平均的な家庭でも、必要な費用を用意することは可能です。
また、「世帯年収が少ない」「子どもが2人いるのでもっと貯金したい」という人にも、以下のような支援金の制度があります。
・私立小中学校等就学支援実証事業(※3)
平成29年度から開始された事業です。都内の私立小中学校などに子どもが在学している年収約400万円未満の世帯に対し、年額10万円が補助されます。文部科学省指定の調査票に必要事項をすべて記入・提出すると、学校が代理受領し、授業料が減額される仕組みです。
・高等学校等就学支援金制度(国の制度)(※4)
平成26年4月以降の入学者を対象とする国の制度です。国公私立問わず、高等学校などに通う一定の収入額未満の世帯の生徒に対し、授業料充当用として高等学校等就学支援金が支給されます。支給金額は高等学校の区分によっても違いますが、たとえば年収350~590万円世帯の生徒には、年額約17.8万円が支給されます。
・私立高等学校等授業料軽減助成金事業(東京都の制度)(※5)
都内在住かつ私立高等学校などに通う生徒の保護者に対し、授業料の一部を補助する制度です。世帯年収760万円未満の家庭に対し、上記の就学支援金と合わせて都内私立高校の平均授業料に相当する年44.9万円までが補助されます。ただし、在学校の授業料が年44.9万円以下の場合、その授業料が補助の上限となります。(※6)
これらの支援金制度は所定の手続きによる申請が必要ですが、対象者が幅広くお得な制度なのでぜひ利用しましょう。また、「私立高等学校等授業料軽減助成金事業」以外にも、各都道府県が支援金制度を用意している場合がありますので、都内在住でない人も一度お住まいの都道府県に問い合わせてみるといいかもしれません。
入学までにかかる費用の差は公立・私立でどれくらい?
これまで見てきたとおり、公立(都立)の中高一貫校は70.2~108.2万円、一般的な私立の場合は183~228.5万円、高額な私立の場合は218~298.5万円程度が入学までにかかります。
公立(都立)と私立の費用の差を比べると、私立は公立(都立)の2~3倍もの費用となっています。
どの項目も私立のほうが高額ですが、特に塾・家庭教師代については大きな差があります。上図ではわかりやすく小学5年生から通う想定で計算していますが、公立(都立)志望の場合は小学6年生から、私立志望の場合は小学4年生から通う場合が一般的と言われています。その場合、公立志望の塾・家庭教師代は50万円程度、私立志望の塾・家庭教師代は200万円程度が相場であるため、ここだけで150万円程度の差があることになります。
ただし、私立の教育費が高すぎるとは言いきれません。私立の場合は、大学まで付属している中高一貫校もあります。その場合、中学受験時の費用が高い分、大学受験時の費用がかからないというメリットがあります。公立(都立)の中高一貫校は大学受験が必須となるため、中学受験時の費用が安い分、大学受験の費用が必須となります。
また、上記でご紹介した各種支援金制度もあるため、十分な貯蓄をしておけば、中高一貫校入学後に支援金の分が浮き、家計も楽になる可能性があります。
中高一貫校への入学を希望するなら、早めに貯蓄しておこう
今回の記事では、中高一貫校への入学を決めるのは小学校高学年が多いことがわかりました。子どもが「中高一貫校を目指したい」と思うのであれば、遅すぎるということはないと思います。そして、中高一貫校への入学までにかかる費用は、公立(都立)の中高一貫校は70.2~108.2万円、一般的な私立の場合は183~228.5万円、高額な私立の場合は218~298.5万円程度かかることがわかりました。どんな学校へ通わせるにしても、子どもを通わせたい学校にはいくら必要なのかを計算し、早期から計画的に貯蓄していくことが大切です。進路の選択肢の1つとして、中高一貫校を視野に入れてみてはいかがでしょうか。
- 参照元
- (※1)参照:『高等学校教育の改革に関する推進状況について』(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kaikaku/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/04/13/1384268_001.pdf(1ページ目)
(※2)参照:『「第4回(2016)子育て世帯全国調査」結果速報』(労働政策研究・研修機構)
http://www.jil.go.jp/press/documents/20170914.pdf(5ページ目)
(※3)参照:『私立小中学校等就学支援実証事業』(公益財団法人東京都私学財団)
https://www.shigaku-tokyo.or.jp/pa_cyusyo.html
(※4)参照:『高等学校等就学支援金制度(新制度)について』(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/index.htm
(※5)参照:『私立高等学校等授業料軽減助成金事業』(公益財団法人東京都私学財団)
https://www.shigaku-tokyo.or.jp/pa_jugyoryo.html
(※6)参照:『【全日制・定時制向け】保護者負担軽減リーフレット』(公益財団法人東京都私学財団)
https://www.shigaku-tokyo.or.jp/pdf/pamphlet/h30_brochure.pdf(1ページ目)