日本の大学、順位低迷の理由に予算不足も?

英国の教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」(THE)が発表した2016(平成28)年「世界大学ランキング」で、日本のトップ大学である東京大学は、前回43位から39位にランクを上げたものの、アジア地域では、前回3位から4位に落ちました。200位以内では、京都大学が91位(前回88位)に入っているだけです。政府は2023(平成35)年度までに100位以内に日本の大学10校をランクインさせる目標を掲げていますが、その実現は、極めて困難なようです。

躍進するアジア地域の他大学

THEの大学ランキングは、世界的にも大きな権威があり、各国の有名大学がランクを競っています。2016(平成28)年の1位は英オックスフォード大学、2位は米カリフォルニア工科大学で、上位20校中19校を米英両国の大学が占めています。

東大は、シンガポール国立大学(24位)や、中国の北京大学(29位)と清華大学(35位)に及びませんでした。東京大学は長らくアジアでトップの座を守っていましたが、2015(平成27)年にアジア3位に転落、16年もアジアトップの奪還はならず、逆に順位を落とした形となりました。

ただしTHEの大学ランキングは、13指標の評価で決められ、英米両国や英語圏の大学が有利になる傾向があります。東京大学の順位が低いのも、英語による論文数や外国人教員比率が少ないことが影響しているようです。このため、東京大学のレベルが下がったというよりも、他のアジア地域の有力大学がグローバル化対応に成功して実力を上げてきたというのが、正確な見方でしょう。

これに対して、外国人教員や外国人留学生を増やしたり、無理に英語で授業をしたりする必要はないなど、大学ランキングに否定的な声も、大学関係者の中には少なくありません。その一方で、教育研究投資を増やしているアジア地域の大学に比べて、日本の大学の遅れを懸念する声もあります。

公財政支出を削る日本の大学政策

政府は2013(平成25)年に、今後10年間で世界大学ランキング100位以内に日本の大学10校をランクインさせるという目標を掲げました。その具体化に向けて、2014(平成26)年に東大や筑波大学など13校を「スーパーグローバル大学(トップ型)」に指定し、各大学に最大で年間5億円の予算を措置しています。

しかし、たとえば東大の年間予算は2,000億円以上ですから、それに比べれば、微々たる額にすぎません。一方、国立大学全体への運営費交付金は、2004(平成16)年の国立大学法人化以降、12年間で約12%も削減されています。また、私立大学全体の経常的経費に占める国の補助金の割合も年々低下し、現在は約1割程度にまで落ち込んでいます。
経済協力開発機構(OECD)の調査でも、大学など高等教育費に対する家庭などの私費負担率は65%で、加盟国平均(30%)の2倍を超えています。大学全体に対する運営費や補助金をカットしながら、わずかな予算を一部の大学に配分しているというのが日本の現状です。

大学ランキングの順位やグローバル化よりも前に、日本の大学政策には、大きな問題があると言えそうです。

※THE 2016年世界大学ランキング
https://www.timeshighereducation.com/world-university-rankings/2017/world-ranking#!/page/0/length/25/sort_by/rank_label/sort_order/asc/cols/rank_only

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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