実はアクティブ・ラーニングは<目玉>じゃない!? 次期指導要領

次期学習指導要領について、中央教育審議会答申の原案に当たる「審議のまとめ」が教育課程部会で了承され、現在、パブリックコメント(意見公募手続)とともに、教育関係団体のヒアリング(聴聞会)が行われています。
ところで、2014(平成26)年11月の文部科学大臣による諮問以来、学校の先生方には、「アクティブ・ラーニング」(※以下AL)が次期指導要領の目玉だと受け止められてきました。しかし審議まとめを読むと、むしろALを強調するトーンは抑えられています。なぜALが「後退」したのでしょうか。

説明あっさり、太字にもならず

もともと大学教育の用語だったAL(「能動的学修」と訳す)は、諮問理由の説明文で、「課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)や、そのための指導の方法等を充実させていく必要があります」とあったことから、がぜん学校現場の注目を集めました。大きな書店に行くとAL関連書籍のコーナーができているほどですし、ALをテーマにした先生向けの研究会や研修会も活況を呈しています。

ところが、審議まとめの「ポイント」を見ると、「社会に開かれた教育課程」「学びの地図」「カリキュラム・マネジメント」などが太字で強調される一方、ALは普通の字になっています。その代わりに太字になっているのが、「主体的・対話的で深い学び」です。

諮問文にALが入ったのは、実は、一斉授業が多く「アクティブ」ではない高校を主なターゲットにしたものだったと、関係者が明かしています。しかし実際には、高校以上に小学校や中学校の先生方に関心が高まり、「AL祭り」とやゆされるまでになっています。中教審の審議でも、回を重ねるごとに、ALに誤解すら広がっていることを心配して、丁寧な説明をすべきだとの意見が強まっていきました。その結果、ALが<後退>することになったようです。

重要なのは「主体的・対話的で深い学び」の授業改善

改めてポイントを見ると、「『学び』の本質として重要となる『主体的・対話的で深い学び』の実現を目指した『アクティブ・ラーニング』の視点から、授業改善の取り組みを活性化していくことが必要」となっています。実はこの部分も、ポイントの当初案では、もう少し詳しく解説していたのですが、最終的には、先の一文のように、あっさりとしています。

一般にALは、子どもたち自身に調査や討論、発表をさせるといった、学習活動を「アクティブ」にすることだと受け止められてきました。
しかし、審議まとめでは「形式的に対話型を取り入れた授業や特定の型を目指した技術の改善にとどまるもの」ではないと断言しています。中教審では、「子どもたちの頭の中をアクティブにすることが重要だ」という指摘も相次いでいました。

ALの究極の目標は、学校で学んだことが社会に出てからも生かせるような、幅広い「資質・能力」を身に付けさせるような授業を行ってもらうことです。ただALを行うだけでなく、それが本当に「主体的・対話的で深い学び」になっていて、着実に資質・能力を育てているものになっているのかどうかが問われるのです。

※中教審教育課程部会「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/053/siryo/1376199.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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