大学の43%が英語資格・検定を入試で活用

実用英語技能検定(英検)やGTEC、TOEFLなど、民間の英語資格・検定試験の結果を、大学入試で活用している大学は43.0%に上ることが、文部科学省の調査でわかりました。大学入試センター試験に代わる新テストでも、英語の試験と同時に、英語資格・検定試験を活用することが検討されており、今後、さらに英語資格・検定試験への関心が高まることが予想されます。

国立大の1割以上が一般入試でも活用

調査は2015(平成27)年11~12月に、全国の国公私立大学750校を対象に実施し、695校(92.6%)から回答を得ました。それによると、大学入試で英語資格・検定試験の結果を英語の試験に代替するなど、活用した大学は299校で、全体の43.0%(国立43.2%、公立26.3%、私立45.5%)に上っており、2年前の調査よりも7.2ポイント増えています。

活用した入試の種類を見ると、推薦入試が29.2%(国立23.5%、公立21.3%、私立31.5%)、AO入試が24.2%(国立13.6%、公立10.0%、私立27.9%)となっている一方、一般入試での活用は6.3%(国立11.1%、公立1.3%、私立6.4%)にとどまっています。やはり英語資格・検定試験の活用は、推薦入試とAO入試が主体であり、一般入試での利用はまだ少ないようです。ただし、国立大学では一般入試でも活用しているところが既に1割以上あることが注目されます。

英語資格・検定試験を入試で活用した理由(複数回答)は、「より優秀/グローバルな意識が高い学生を確保する為」が64.2%、次いで「英語4技能の能力が測定できるから」が48.2%などでした。

文科省は、英語教育について「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能をバランスよく習得することを求めています。ところが現行の大学入試の英語の試験は「読む」「書く」の2技能が中心で、これが英語教育の大きな障害になっているといわれています。これに対して英語資格・検定試験は、4技能の能力を判定することを目的としています。より優秀でグローバルな人材、英語の4技能を使いこなせる人材を獲得するため、英語資格・検定試験を入試で活用しているようです。

求められる「4技能」の評価

一方、英語資格・検定試験を活用しない理由としては、「自校で行っている入学者選抜の方法で十分」が74.2%でトップでした。しかし、「現在の選抜方法は十分ではないが民間試験導入は困難」(16.9%)と回答した大学に更に尋ねたところ、「適切な合否ライン設定が困難」「民間の英語の資格・検定試験の内容や評価方法についての情報が不足している」など英語資格・検定試験に関する情報や理解が不足していることを理由に挙げている大学も少なくありませんでした。逆に言えば、英語資格・検定試験への理解が深まれば、入試で活用する大学はもっと増える可能性があるということです。

センター試験に代わる新テストでは、4技能を評価することが検討されており、その一環として、英語資格・検定試験を活用することも検討されています。次期学習指導要領の改訂でも、英語は4技能の習得が重視されることになっています。

大学入試での活用は、今後も増えていくと思われます。大学進学希望者やその保護者も、英語資格・検定試験の種類、特徴などを知っておく必要があるかもしれません。

  • ※民間の英語資格・検定試験の大学入学者選抜における活用実態に関する調査研究
  • http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/117/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2016/05/24/1368985_4_1.pdf
  • ※英語4技能試験情報サイト
  • http://4skills.eiken.or.jp/index.html

(筆者:斎藤剛史)


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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