サイエンスコミュニケーターが教える! ワンランク上の自由研究【前編】研究の深め方

近年、小学校や中学校では自由研究が必須ではない学校も多いようです。しかし、自由研究は科学のおもしろさを知るためのとてもよい機会のはずです。では、どうしたら自由研究を深められるのでしょうか。筑波大学生物学類のサイエンスコミュニケーターとして、未来の科学者を育成するプロジェクトに関わる尾嶋好美さんに、自由研究のポイントを伺いました。



グンと学びが深まる自由研究のコツ

自由研究で学びを深めるためには、いくつかポイントがあります。ここでは4つご紹介します。

(1) 誰も知らないことを研究しよう!
 自由研究では、インターネットで検索してわかるようなことではなく、誰も知らないことを研究するとおもしろいです。誰も知らないことというと、難しく聞こえるかもしれませんが、どんなに小さなことでもかまいません。

たとえば、ダンゴムシは歩いている時に壁にぶつかると左右交互で曲がるという習性(交替性転向反応)を持っています。しかし、「ずっと真っすぐに進んでいたら次に曲がる方向を忘れてしまうんじゃないか」と考え、それを中学生時代に検証した生徒がいます。彼は中学2年生から筑波大学が未来の科学者を育成するプロジェクト、SSリーグに所属し、ダンゴムシの研究を続けていました。そして、高校2年生になった2013年、世界レベルの科学者・技術者をめざす高校生たちが研究成果を競うコンテスト「第11回高校生科学技術チャレンジ(JSEC2013)」で、文部科学大臣賞を受賞したのです。

生物にはまだまだ知られていない生態がたくさんありますので、テーマとしてはオススメです。好きな動物、好きな昆虫の生態について調べてみるのはおもしろいかもしれませんね。


(2) 何と何を比べるかはっきり決めよう!
 テーマが決まったら、自分なりの仮説を立て、その仮説を立証するために実験を行い、結論を導くのが自由研究の流れになります。実験でポイントになるのが、何と何を比べるか決めることです。その際、比較するもの以外の条件をすべて同じにする必要があります。実験の条件がそろっていないと、結果がはっきり出ないことがあるからです。

たとえば、パンはなぜ膨らむのかを検証するには、レシピどおりに作ってもわかりません。ドライイーストが何かと反応して、パンを膨らませる役割を果たしていると仮説を立て、それを検証する実験を行います。パンの主な材料である小麦粉、砂糖、塩をそれぞれお湯に溶かし、そこにドライイーストを混ぜてみるのです。この時、温度や量などのその他の条件をそろえることが大事です。すると、砂糖を溶かしたお湯にドライイーストを加えるとぶくぶくと二酸化炭素が出てくることがわかり、パンが膨らむ原因を知ることができるのです。

このように、パンはなぜ膨らむのかという単純なテーマでも、こうした手順で行えば、科学的な実験になりますし、これを表にまとめれば、立派な自由研究になります。テーマが決まってどんな実験を行えばよいのかわからない場合は、学校の理科の先生に相談してみるとよいでしょう。


(3) 正確に計量、計測しよう!
 科学実験では、正確な計量や計測をすることがポイントです。これは、条件を変えて実験した場合に、比べられるようにするためです。科学実験では、何度やっても同じ結果が得られるという再現性がとても重要だからです。量であれば、1グラム単位で量れるはかりを使って計量し、その結果をメモしておきましょう。


(4) 予想どおりの結果にならなかったら?
 予想どおりの結果にならなかった時こそ、オリジナルの自由研究をするチャンスです。原因を細かく考えてみましょう。そして実験の条件を少しずつ変えていき、結果を比べてみてください。


次回は、自由研究のまとめ方のコツを伺います。



小中学生の保護者必見!読書感想文で苦労しないコツ!小中学生の保護者必見!自由研究・工作で苦労しないコツ!



プロフィール


尾嶋好美

筑波大学生物学類サイエンスコミュニケーター。筑波大学次世代科学者育成プログラム・SSリーグ、筑波大学サイエンスコミュニケーショングループSCOUTなどの運営に関わっている。著書『家族で楽しむおもしろ科学実験』(ソフトバンククリエイティブ)等。

子育て・教育Q&A