やめる? 続ける? 中学受験生の習い事・課外活動-持田聖子-

中学受験を予定しているご家庭では、親子で忙しい日々を過ごしていることと思います。習い事と中学受験勉強を両立させている保護者は「習い事のほうはそろそろやめどき?」と頭をよぎることもあるでしょう。また、受験はまだずっと先で、「受験塾は5年生になってから」などと決めている家庭でも、それまでの間にどんな勉強や習い事をさせるのがよいか、迷うこともあると思います。
ベネッセ教育総合研究所が2013(平成25)年の3月に実施した、子どもを持つ母親へのアンケート調査(「第2回学校外教育活動に関する調査」)によると、春に中学受験を経験した小学6年生(※1)(※2)のうち、52.4%が学校の授業以外になんらかのスポーツ活動を、36.5%が芸術活動(楽器の練習、絵画・造形、バレエなど)を、6年生になってからも定期的に行っていたようです(※3)。進学塾への通塾率は71.8%なので、塾とそれ以外の活動を両立させていた子どもが少なくないことがわかります(図1)。



【図1 中学受験予定者の進学塾への通塾率】
図1 中学受験予定者の進学塾への通塾率

※図1:1年間に定期的に通っている(通っていた)塾・教室について、「受験勉強をするための塾(進学塾)」を選択した割合


では、中学受験を予定している小学生が、スポーツや芸術活動にどのくらい取り組んでいるのか見てみましょう。

<男子>
スポーツや芸術活動の度合いは男女で差があるので、男女別にデータを算出しました。まずは男子から。
中学受験予定の男子が、なんらかのスポーツ活動を行っている率は、5年生まではいずれの学年でも80%台と高いです(図2)。しかし6年生になると、63.3%と急激に落ちこみます。
芸術活動は、スポーツほど多くの男子が行っていません。どの学年でも2~3割程度です。5年生→6年生で32.3%→22.2%と減少していますが、スポーツ活動ほど極端な差ではありません。
なお、中学受験を「しない予定」あるいは「まだ決めていない」男子の場合、スポーツでも芸術でも、4年生から6年生の3年間で活動率に大きな差はありません(図表省略)。中学受験生は受験勉強が最優先で、通塾との兼ね合いもあり、やむなくスポーツなどの活動をやめていくのであろうと想像できます。



【図2 中学受験生(男子)のスポーツ・芸術活動の活動率】
図2 中学受験生(男子)のスポーツ・芸術活動の活動率

※図2:1年間に定期的に通っている(通っていた)活動について、スポーツは26項目から、芸術活動は14項目から選択。それぞれ、ひとつでも行っている場合を表している


<女子>
女子でスポーツを行っている割合は、どの学年においても男子より低く、5年生までは6~7割程度です。(図3)。5年生から6年生で落ち幅が大きく、5年生59.7%→6年生40.0%となっています。
芸術活動をする割合は、逆にどの学年においても男子より高くなっています。4年生以降は、学年が上がるにつれて減少します。ただ、5年生から6年生への落ち幅はスポーツ活動のように極端なものではなく、3.3ポイント差しかありません。5年生→6年生の減少は、中学受験生に限った現象ではなく、中学受験を「しない予定」+「まだ決めていない」女子では、5年生48.5%→6年生39.9%で、中学受験生以上に減少しています(図表省略)。ですから、6年生で芸術活動を行う女子が少なくなる要因は、中学受験以外にあるのかもしれません。



【図3 中学受験生(女子)のスポーツ・芸術活動の活動率】
図3 中学受験生(女子)のスポーツ・芸術活動の活動率

※図3:1年間に定期的に通っている(通っていた)活動について、スポーツは26項目から、芸術活動は14項目から選択。それぞれ、ひとつでも行っている場合を表している


これまで見てきたデータが示すとおり、中学受験を予定している子どもは、進学塾などで教科学習を熱心に行うことに加え、多くの場合スポーツや芸術活動にいそしんでいます。大多数の男子は小学校低学年のうちからスポーツに取り組み、6年生でも3分の2近くがスポーツをやっています。女子の場合は、スポーツに加えて芸術活動に取り組む割合も多く、ともに4年生までは6~7割の子どもが行っています。5年生から減少が始まりますが、6年生時点でも、芸術活動は5割程度、スポーツ活動は4割程度の女子が取り組んでいます。
受験勉強が本格化するにつれて、それまで楽しく通っていた習い事や課外活動が負担に感じられることもあるでしょう。6年生になると進学塾に通う日数も時間も多く、長くなり、週末は模擬試験や学校選びに時間を割かなければなりません。しかし子どもの習い事への熱意が感じられるなら、なるべくそれに応えてあげたいものです。たとえば、しばらくの間は週1回の習い事を隔週にすることで両立できるかもしれません。また、週末の塾内テストの時間が習い事と重なってしまった場合に、申し出ればテストの時間をずらしてくれる塾もあります。振替授業など時間の融通がきく個別指導の塾を見つけて、習い事と両立させる方法もあると思います。
習い事の先生、塾の先生とも相談し、本調査の結果も参考にしながら、子どもも親も納得できる着地点を探ってみてください。


(※1)小学生の保護者(母親)で、「お子さまは中学受験をする予定ですか」に「はい」と答えた人。小学生の子どもが複数名いる場合には、第1子についての回答を求めた。

(※2)3月下旬に行った調査なので、6年生の場合、ほとんどが実際に中学受験を経験したあとに回答していると考えられる。

(※3)調査では、「この1年間で、お子さまが定期的にしていた運動やスポーツ(音楽活動や芸術活動)はありますか(ありましたか)」と尋ねており、この調査が行われた3月下旬の時点で行っていたとは限らない。


プロフィール


持田聖子

ベネッセ教育総合研究所 学び・生活研究室 主任研究員。生活者としての視点で、妊娠・出産期から乳幼児をもつ家族を対象に、人が家族を持ち、役割が増えていくなかでの意識・生活の変容と環境による影響について研究。

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