なぜ、男の子は乗り物、女の子はぬいぐるみを好むの? 遊びの性差【前編】

教えたわけではないのに、男の子は電車や車、女の子は人形やおままごとを自然と好きになる。そんな子どもの姿を不思議だと感じたことはありませんか。発達心理学を専門とする聖徳大学の相良順子先生にお話をうかがいました。

遊びに性差があるのは、性ホルモンの影響が大きい

数十年前は、男女が好むおもちゃや遊びが異なるのは、環境の影響と考えられていました。例えば、男の子は電車や車のおもちゃ、女の子はぬいぐるみなどを与えられることが多いため、それらを自然と好きになるのだろうと思われていたのです。

ところが、ここ10年ほどの研究により、こうした性差は母親の胎内にいるときのホルモンの影響が大きいことがわかってきました。胎内では妊娠8週目くらいから性別化が起こり、男の子は精巣がつくられると男性ホルモンが多量に分泌されます。一方、女の子はそのような影響を受けません。この違いがおもちゃや遊びの好みの差をもたらしている可能性があると考えられています。そのあかしとして、病気などにより男性ホルモンの影響を受けた女の子は、そうではない女の子より、男の子の遊びを好むことがわかっています。

環境には生まれもった個性を伸ばす役割がある

一方、生まれもった個性を伸ばすという点で、環境の影響も小さくありません。もともと電車が好きな男の子に電車のおもちゃを与えると、もっと電車が好きになるということです。逆に言うと、その男の子にぬいぐるみや人形を与えても、もともと興味がなければ、好きになることはあまりありません。

子どもは3歳くらいになると、世の中には男と女がいて、自分の性別がどちらであるかをはっきりと意識します。すると自分から、男らしさ、女らしさを求めるようになります。子ども自身が、「これは男の子(女の子)向きか」という視点をもって、おもちゃやテレビ番組などの環境を自ら選び取るようになり、ますます性差が強くなっていくのです。

猿が好む遊びにも、人間同様に性差がある

一般に男の子が好むものは、乗り物や怪獣、恐竜、戦隊モノ、一方、女の子はぬいぐるみや人形、おままごとなどでしょうか。どうしてこれらを好むのかは、現在のところ、科学的に解明されていません。理由ははっきりしませんが、男の子は動くもの、大きいもの、強いもの、女の子はやわらかいもの、丸いものなどを好む傾向があるようです。

おもしろいのは、人間以外の霊長類にも同様の傾向が見られることです。猿の前にいろいろなおもちゃを置くと、オスは自動車などの動くおもちゃ、メスはぬいぐるみなどを選ぶという研究結果があります。オスが動くものに興味をもつのは戦い、メスがぬいぐるみを好むのは子育てに関連しそうなことを考えると、本能的なものかもしれません。

一般に男の子の方が動きが活発で、戦いごっこなどの遊びを好みますが、これもホルモンの影響が大きいと考えられています。猿などを見ても、オスの方が取っ組み合いの遊びを多くすることがわかっています。

女の子がおままごとを好むのは、ホルモンの影響よりも、母親の姿をまねていることが大きいと思います。今の時代は家事に積極的な父親も増えていますから、今後はおままごとを好む男の子が増えてくるかもしれませんね。

後編では、相良先生が遊びに関する疑問や悩みにお答えします。

プロフィール



お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士課程修了。博士(人文科学)。専門は発達心理学。主な著書に『子どもの性役割態度の形成と発達』(風間書房)など。

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