話す時は上手ですが、そのことを文字にするとうまく表現できません[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小3男子(性格:神経質・よい子タイプ)のお母さま


質問

作文が苦手です。話す時などはいろいろな表現をして上手に話しますが、そのことを文字にするとうまく表現できません。読書は大好きで、物語をよく読みます。


小泉先生のアドバイス

「一文の流れ」や「文と文の関係」などを段階的に学んでいく。

「話す」と「書く」にはどのような違いがあるのでしょうか。「話す」時は「文は短め」「わかりやすい言葉が使われる」「語順などの乱れはあまり気にならない」というのが一般的でしょう。これに対して、「書く」時は、「文は長め」「難しい言葉が使われる」「文の構造や文章の構成は、しっかりしていないとわかりにくい」ということになります。

「話す」場合は、意味がわからなければ相手にすぐに聞くことができますから、文脈が乱れていたり不明確であったりしても言葉のやりとりでコミュニケーションは可能になります。このように「話す」ということは、かなりいい加減でも成立してしまうものなのです。
これに対して、「書く」というのは非常に厳しいものです。あれほど饒舌(じょうぜつ)だった子どもたちが、作文などを書かせると、意味不明な文章や箇条書きのような文章を書いているのをみれば、「話す」と「書く」がいかに違うかがわかります。

「話せる」が「書けない」子どもたちに共通する文章の特徴をいくつかあげてみましょう。

まずは、語彙が明らかに不足しています。
書き言葉に用いるような抽象的な言葉を十分に知らないため、表現が幼くなるばかりか表現できないという場合さえあります。文章を書く場合、キーになる言葉を使えるかどうかでその文章の格調が違ってきます。お子さまの場合は読書が大好きということですから、物語に出てくる言葉を日頃からできるだけ使うように心がけ、自分のものにするように意識されるとよいと思います。使い方をまちがえて、トンチンカンな文や会話になる場合もあるでしょう。しかし、言葉はまちがえながら覚えるものです。恥ずかしがらずに、どんどん使って自分の語彙を増やしていってください。

 次に目立つのが、1つの文において、文頭から文末までの流れがおかしい場合が少なくないことです。
たとえば、「きのうは遠足で水族館に行って楽しかった。」であればよいのですが、「きのうは遠足で水族館に行って魚が泳いでいた。」では明らかに妙な文になってしまいます。おそらく、「きのうは遠足で水族館に行き、珍しい魚が泳いでいるのを見られて楽しかった。」などと書こうとしているうちに、最初に書いたことを忘れてしまったのでしょう。
極端な例をあげましたが、このような失敗をやっている子どもも少なくないと思います。

さらに、文と文の関係があいまいな場合も多く見受けられます
一般的に、前の文とそのあとの文には「言い換え」「理由」「具体例」「補足説明」などの関係があります。そして、関係をわかりやすくするために「接続語」などを使って読み手にその関係を明示します。たとえば、前の文の「理由」をあとの文で示す場合は、わかりやすいように「なぜなら」などの言葉をはさみます。このような関係がはっきりしていないと、文と文は切れ切れになり、それこそ箇条書きになってしまいます。ボソボソ切れていてスムーズな流れがない文章には、読んでいても違和感や味気なさが残ります。

また、段落と段落の関係などの文章の構成も大切です。
わかりやすい作文にするためにも、しっかりした構成の文章が望ましいでしょう。そして、慣れてくればさまざまなアレンジをして、文章の流れに変化を付けることもよいでしょう。しかし、まずは一定の型に従った、きっちりとした文章を書けるようになることが大切だと思います。

とはいっても、一足飛びにそこまで上手に文章を書けるようにはなりません。「一文の流れ」はよいか、「文と文の関係」はしっかりしているかなど段階的に学んでいきましょう。そして、まずい点はご家庭でもどんどん直してあげるとよいと思います。練習をくり返していくと、意外に短い期間で書き方が上手になってくると思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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