国語で、問題文の大切なところに線を引いたりするなどの、コツやテクニックがわからない[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小5女子のお母さま


質問

5年から始めた国語の入試パターンの問題に慣れるので精いっぱいだった印象。少しずつ力はついてきているが、線を引いたりするなどのコツやテクニックがわからない、知らないと思います。そういった方法を教えてください。


小泉先生のアドバイス

線は「登場人物」や「心情」、または「理由」などに引きましょう。

「問題文の大切なところに線を引きながら読みなさい」とよく言いますが、それでは「大切なところとはどこか?」と聞かれると、なかなか答えることができないものです。今回は、物語文を読む時どこに線を引くべきなのか、すなわち、どこが大切なのかを考えてみたいと思います。

物語文で大切なところは、まずは登場人物とその関係です。新しく登場人物が出てきたら、その度に丸で囲って印をつけましょう。主人公は誰なのか、ほかの登場人物は主人公とどのような関係なのかも明らかにする必要があります。ただし、何回も出てくる同じ登場人物すべてに線を引く必要はありません。せいぜい、はじめの2~3回で良いでしょう。

次は、登場人物の気持ちを表す言葉、いわゆる心情表現と呼ばれるものが大切です。心情表現には、「直接的な心情表現」と「間接的な心情表現」があります。前者は、たとえば「悲しい」とか「うれしい」とか、直接的に気持ちを表す言葉です。それに対して後者は、「頭をかく=恥ずかしい」とか、「こぶしで机をたたく=腹立たしい」など、言葉や動作などで、間接的に気持ちを表す言葉です。また、なぜそのような気持ちになったのかの理由を表す箇所にも線を引きましょう。なお、同じ登場人物の≪同じ気持ちを表す表現≫が続く場合がありますが、そのような場合も、線を引くのは最初のほうだけで良いでしょう。本文が線だらけになると、かえって見にくくなります。
ただし、気持ちが変化したら、そこにはしっかりと線を引いてください。また、気持ちが変わった理由にも線を引きましょう。これらの場所は、非常に大切です。最初から最後まで、気持ちが変わらない物語文もありますが、多くの場合、登場人物の気持ちは変化します。特に、主人公の気持ちの変化(最初の気持ちと最後の気持ちの違い)とそれにともなう人間関係の変化は、その物語文のイイタイコトをつかむためにはとても大切なポイントになり得ます。たとえば、最初は友達関係で悩んでいた(マイナスの気持ち)が、ある出来事によってすっかり悩みが消えた(プラスの気持ち)というような物語の場合は、「悩んでいた」「悩みが消えた」「理由」を表す箇所に線を引くと良いでしょう。なお、心情表現については線のところにを付けて、見やすくしておくのも良いでしょう。

場面が変わった場合も、そこにも印をつけておきましょう。登場人物の気持ちは、場面が変わると変化していく可能性がありますから、その意味でも場面の変化には注意する必要があります。また、「しかし」とか「なぜなら」などの接続語にも印をつけて、それらの前後の表現の関係を意識することも大切です。たとえば「しかし」であれば、逆接の接続語ですから、前のことがらとは反対のことがらがくるはずです。また、「なぜなら」は「説明・理由」の接続語ですから、理由をあとで説明しているはずです。物語文の流れを理解するうえで、大変重要なポイントになりますから、しっかり印をつけて読んでいきましょう。
このほかにも、読み手が「これは大切だ!」と思った箇所には線を引いても良いのですが、人によってはそこら中が大切に思えて、大量に線を引き、問題文が線だらけになってしまう場合があります。このような生徒さんは、「本当に大切だと思った箇所」だけに線を引くようにしましょう。

さて、最後に忘れてはいけないのが、問題文にある問いに関連した傍線部です。このような傍線部があったら、その箇所に関連した「気持ち」や「理由」を考えることが大切です。たとえば、本文に「声をかけようとしたが、やめた」とあり、そこに傍線部が引いてあったとします。このような場合は、「その人はどのような気持ちだったのか?」「なぜやめたのか?」を考えるということです。そして、気持ちがわかる心情表現があれば、そこに線を引き、必要であればの印を付けましょう。また、その気持ちになった理由がわかる表現があれば、そこに線を引いてすぐにわかるようにしておきましょう。問いに答える時に、きっと役に立つと思います。
なお、問いの傍線部にたどり着くごとに問題文を離れ、問いに答える生徒さんがいますが、この方法はおすすめできません。たとえば、傍線部の前後に答えがあるような簡単な問題であれば良いのですが、答えが遠くに離れている場合もあります。問題文をしっかり最後まで読んでから、問いに答えるのが一般的な試験のやり方だと思います。

以上、線を引くべき大切な箇所を挙げてみました。線を引く意味は、大切な箇所を見失わないようにすると同時に、考えながら文章を読むためでもあります。また、集中力をアップさせる効果もあると思います。大切な箇所に線を引きながら読むクセを、低学年からつけておくと良いでしょう。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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