面倒見のよさ示す私立大学

日本私立学校振興・共済事業団は、2015(平成27)年度「私立大学・短期大学教育の現状」を公表しました。私立大学が取り組んでいるものとして、最も多く挙げられたのは「就職支援」で、次いで「学生の心身に関する支援」でした。就職から心身の健康維持まで、今どきの私立大学の「面倒見のよさ」がうかがわれます。

多いのは就職支援や学生支援

調査は、2015(平成27)年8月末現在で、各私立大学などが実施している教育上の取り組みなどを調べたもので、534大学が回答しました。

まず、私立大学の取り組みについて見ると、1位は「就職支援」で89.0%、2位は「学生の心身に関する支援」で88.4%、3位は「学費負担の軽減(経済的支援)」で85.2%、4位は「学費負担の軽減(学生生活の支援)」で84.6%、5位は「地域連携」で80.0%などの順となっています。

学生の就職活動を支援すると同時に、学生の心の問題や体の健康管理などに私立大学が力を入れていることがわかります。さらに、経済的支援と学生生活支援の両方で「学費負担の軽減」に力が入れられていることから、独自の奨学金支給や授業料の減免などが、私立大学にとっても大きな課題となっていることがうかがえます。

6位以下を見ると、「キャリア教育(進路選択教育の取り組み)」が75.1%、「資格取得(国家資格受験資格)(学びの支援)」が73.4%、「資格取得(国家資格受験資格)(進路選択教育の取り組み)」が73.2%、「インターンシップ(進路選択教育の取り組み)」が71.9%、「キャリア教育(学びの支援)」が71.7%などで、やはり卒業後の進路選択に関する支援が並んでいます。

就職率など卒業者の進路状況が、大学選びに当たっての大きな要素となっている現在、私立大学は、キャリア教育や資格取得などにも力を入れているようです。それだけ私立大学は、学生の卒業後の進路や就職状況に敏感になっていると言ってよいでしょう。

ただし、「卒後調査の活用(進路選択教育の取り組み)」は32.4%にとどまっており、大学での教育が就職や職業生活などでどのように役立ったかを調べる取り組みは少ないようです。

課題解決型学習よりも初年次教育?

一方、「教育内容の体系化とその充実」の取り組みは66.7%で23位、「アクティブラーニング」(AL)は62.0%で31位、「成績評価の厳格な運用」は54.7%で38位、「課題解決型学習」は51.1%で41位などでした。就職支援や資格取得などに比べると、実施する大学の割合が低いことが気になります。

ただし、学生の学びについては、大学での能動的な学習の基本的スキルを身に付ける「初年次教育」は71.3%、「少人数教育」は67.4%、授業に対する学生の不安解消といった「学びの組織的な支援」は66.9%と、比較的多くの私立大学で取り組んでいます。ALや課題解決型学習などに取り組む以前に、大学での学び方を教えたり、大学の授業に対する不安を取り除いたりすることが、まず課題となっているとも受け取れそうです。

※私立大学・短期大学教育の現状
http://www.shigaku.go.jp/files/H27kyouikugenjyou.pdf

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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