大学入学の新テストは「2段構え」導入 今の中1と小3で

高校・大学の教育と大学入学者選抜を一体で変える「高大接続改革」で、新設される2つのテストについて、文部科学省の有識者会議に概要案(たたき台)が示されました。いずれも現行の学習指導要領下(現在の中学1年生から)と、次期学習指導要領下(同小学3年生から)の2段構えで、バージョンアップさせながら導入する計画です。

大学入学の新テストは「2段構え」導入 今の中1と小3で



新テストの創設を提言した、昨年12月の中央教育審議会答申(外部のPDFにリンク)では、高校版全国学力テストともいうべき「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を2019(平成31)年度から、大学入試センター試験に代わる「大学入学希望者学力評価テスト(同)」を20(同32)年度から、それぞれ「段階的に実施すること」としていました。段階的というのは、導入当初から完璧な形を目指すのではなく、できる形からでも導入しようという考えからでした。それだけ改革を急がなければ、グローバル化など時代の変化に対応した大学や高校の教育を進めることはできないという認識が、そこにはありました。特に、各テストを年に複数回実施するには、ストックした多くの問題の中からコンピューターでピックアップして出題する「CBT-IRT方式」が必要で、それには解決すべき技術的な問題も山積しています。

概要案によると、まず、基礎学力テストは当初、国語・数学・英語の3教科に絞って導入を目指します。本来なら理科や地歴・公民も実施しなければならないはずですが、まずはスムーズな実施を優先し、後の「段階」に任せるようです。一方で、2017(平成29)年度の試行(プレテスト)からCBT-IRTを目指す方向で検討するとしていますが、紙でのテスト方式も捨ててはいません。高校2~3年生で年間2回(当初は夏~秋)の受検ができるようにし、受検料は、1回数千円程度に抑えたいとしています。新しい指導要領で学ぶ高校生(2022<平成34>年度入学生=現在の小3)が受検する23(同35)年度以降は、新指導要領で定める必履修科目(現在、中央教育審議会で検討中)を基本に出題します。

一方、学力評価テストは、知識を活用した思考力・判断力・表現力などを測定するのが主眼のため、多肢選択式だけでなく、短文記述式や「連動型複数選択問題(仮称)」の導入も目指すとしています。CBT-IRT方式の導入については「適切な実施方法を検討」とするにとどめていますから、まずは基礎学力テストの試行などで様子を見ながら検討していくことになりそうです。

このように、新テストの設計にはまだまだ克服すべき課題があり、必ずしも固まっていませんから、新聞報道などに一喜一憂するのは早計です。まずは学校での勉強、とりわけ思考力・判断力・表現力などを身に付けさせる「言語活動」や「総合的な学習の時間」などに、きちんと取り組むことが肝要でしょう。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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