地方国立大学は「グローカル」目指す?-渡辺敦司-

学校教育をめぐっては近年、「グローバル人材の育成」の強化が各方面から求められており、教育改革の大きな課題になっていることは、折に触れて紹介してきたとおりです。ただ、グローバル人材というと「世界を股に掛けた大企業などの社員の話であって、地元で就職を考えている者には関係ない」と思ってはいないでしょうか? 実はそうではありません。今や全国どこでも、多少なりともグローバルな素養が求められる時代に入りつつあります。

地方の高い人材育成を担う存在といえば、やはり47都道府県どこにも設置されている国立大学が中心的でしょう。国立大学協会は2014(平成26)年12月、「地域と国の発展を支え、世界をリードする国立大学!!」と題する里見進会長(東北大学長)の声明を発表しました。ここでは「すべての国立大学は地域の文化・社会・経済を支える拠点です!」「すべての国立大学は社会・世界に開かれた学生の学びの場です!」などとアピールしています。
もちろん、こうした声明には財政当局から運営費交付金の削減が求められる激しい攻勢に対して、その存在意義を訴えるという意味合いもあります。しかし第3次安倍内閣が「地方創生」を政権の最重要課題と位置付けるなか、高い能力を持って地域を活性化する人材の育成強化が不可欠であることは論をまたないでしょう。
同協会が2014(平成26)年7月にまとめた報告書「地域における国立大学の役割に関する調査研究」(外部のPDFにリンク)でも、そうした姿勢を鮮明にしています。4県での調査をもとに、今後の地方国立大学の在り方の一つとして「グローカルに」ということを挙げています。グローカルとはグローバル(地球規模)とローカル(地方)を合わせた造語で、グローバルな視点を持ってローカルの課題を考えるとともに、ローカルからグローバルへの発信を目指すものとして広く使われています。

下村博文文部科学相は2014(平成26)年12月の産業競争力会議のワーキンググループで、国立大学法人改革の一環として、グローバルに競争する世界水準の研究大学の形成を支援する「特定研究大学」(仮称)制度を創設する一方、各大学の機能強化を図るため、
(1)地域活性化・特定分野の重点支援を行う大学
(2)特定分野の重点支援を行う大学
(3)世界最高水準の教育研究の重点支援を行う大学
の3つの枠組みを設け、各大学が自ら選択した枠組みにより重点支援するとしています。これにより10年来の課題だった大学の「機能別分化」に弾みがつくものと見られますが、(1)を選択した大学ではまさにグローカルな視点での教育・研究の強化が進むことでしょう。

周りを見渡しても、観光地は外国人客でにぎわっています。都会・地方を問わず小・中学校のクラスに外国由来の子どもが複数人いる風景も珍しくなくなりました。東京オリンピック・パラリンピックで更なる国際化の進展が予想されるなか、グローカルはまさに全国どこでも喫緊の課題になっているのです。


プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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