新しい校舎に広がる「木の温かさ」 10校に1校が木造に‐渡辺敦司‐

お子さんが通う学校が、比較的新しく建てられたり改修されたりした校舎の場合、木材が多く使われていると感じたことはありませんか? それは文部科学省などが木材の利用を奨励し、実際にも利用が広がっているからです。

同省の調査によると、2013(平成25)年度に新しく建築された学校1,242棟のうち、75.4%に当たる936棟で木材を使用していました。新築校舎の4校に3校が「木の学校」(文科省発表資料)ということになります。内訳は、ほとんどが木造りの「木造施設」が20.5%(前年度比0.5ポイント増)に当たる254棟、コンクリート造でも内装に木を使っている「内装木質化」が54.9%(同0.3ポイント減)に当たる682棟でした。同年5月現在で、既に全学校施設の10校に1校(10.1%)が木造施設になっています。
木材の使用率を学校種別に見ると、幼稚園では81.6%(うち木造施設30.8%)、小学校77.0%(同16.4%)、中学校77.4%(同19.4%)、高校68.3%(同34.5%)、特別支援学校58.2%(同20.9%)となっており、幼稚園では8割を占めているほか、高校では木材を使用した学校のうち木造施設が約半数となっているのも特徴です。
こうした木材利用が増えたのは、国産材の普及により森を育て、林業を再生することを目指した「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が2010(平成22)年に制定されたことがきっかけです。これを受けて文科省でも新増築の場合は2分の1を、改築や大規模改造の場合は3分の1を国庫補助しています。また、学校を「エコスクール」(環境に配慮した学校)にする場合、内装木質化の補助単価に2.5%を加算。地域材を活用する場合には、さらに2.5%の加算を行っています。

「木の学校」の促進は、単に国土保全や林業促進策のためだけではありません。ぬくもりを感じる木材を使うことで、子どもたちにも落ち着いた、温かみのある環境を整備する意味もあります。快適な学校生活を目指した「スクール・アメニティー」(学校の快適環境)という考え方によるものです。最近きれいなトイレの整備が増えているのも、スクール・アメニティーの一種です。北向き一直線の片廊下に南向き窓の教室が並んでいて無駄なものは一切ない、という合理性一辺倒だった明治以来の校舎の風景が少しずつ変わってきていることは、多くの保護者の方々も実感しているのではないでしょうか。
その一方で自治体の財政難などから、老朽化した校舎が残されたままというケースが目立ち始めています。学校統廃合を控えているという理由のほか、新校舎を建設する予算確保のめどが立たない自治体もあります。木材利用が進んでいるのも、国の補助が手厚いからという側面があります。

学校施設は普段から地域住民に開放されるだけでなく、多くは災害時の避難場所に指定されています。学校をぬくもりのある施設とすることは、子どもはもとより地域全体のためにもなると言えるでしょう。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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