どうする、ネットとの付き合い方 総務省が学校の実践などで事例集‐斎藤剛史‐

インターネットの普及による社会の情報化は、子どもたちの生活や心身の問題にも大きな影響を及ぼしています。特にパソコン並みの性能を備えたスマートフォン(スマホ)が子どもたちの間に広がりつつあり、情報機器やネットに関する適切な活用方法、情報マナーの向上の取り組みが求められています。しかし、実際にどうすればよいのかわからない場合も多いのではないでしょうか。このため総務省は、インターネットリテラシーや情報マナーに関する取り組みを集めた事例集を作成しました。
事例集は21都道府県から学校や自治体、NPO、企業などが主体となった28の自主的な取り組みを集めており、小中学生から大学生、保護者など各年齢層に合った取り組み、地域の実態に応じた取り組みなどを紹介しているのがポイントです。

たとえば、生徒自身が話し合いの中でネット利用のルールをつくり上げた熊本市立江南中学校では、夜10時以降は情報通信をしない、寝るときは電源を切って返信や投稿をしない、個人情報をネットに載せないなどの「江南ルール」を決めました。発端は、無料通話アプリのトラブルをきっかけに2年生が学級担任と話し合って作成したものが、全学年を巻き込んで生徒会での議決となったものです。
また、神奈川県の私立鎌倉女学院高校による「高校生が教える情報モラル教育」は、情報モラルやインターネットの活用方法を学んだ高校生が講師になって中学生に教えるという取り組み。中学生に教えるために高校生は自発的により深く学習するとともに、教えられる側の中学生も年齢が近い高校生に同年代感覚で尋ねられるので、より理解が進むそうです。
埼玉県立芸術総合高校の「IT断食」もユニークな取り組みです。1日だけスマホなどのインターネット接続機器をまったく使わないで過ごし、そこで感じたことをグループで話し合います。「スマホをしきりにいじりたがる自分を発見し、いかに依存しているかがわかった」「ゲームとネットに費やす時間が多いことを発見し、ネット依存かなと感じた」など、日常生活の中でどれだけ多くの時間をスマホで使っていたかを痛感したという感想が多く寄せられたそうです。
一方、大阪市旭区と大阪府立旭高校による「高校生が教える!オトナのためのコミュニケーションアプリ白熱教室」は、スマホの無料通話アプリなどの使い方を高校生が保護者や大人たちに教えるという取り組みで、大人と子どもが普通とは逆の立場になっているのが面白いところです。アプリの使い方などを知らない大人たちに教えるため、高校生はしっかりと情報マナーなどを学ぶと同時に、保護者や地域の大人たちとコミュニケーションすることで自分たちの意識も高まるようです。

スマホなどに関連する問題があることは知っていても、実際にどうしたらよいかわからないという学校関係者や保護者にも参考になる取り組みがあるかもしれません。一度、事例集をご覧になってはいかがでしょうか。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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