12%の市町村で小中一貫教育 成果と課題、相半ば‐渡辺敦司‐

各地の自治体で独自に行われている「小中一貫教育」を正式な制度にするかどうかの検討が中央教育審議会で行われていることは、既にお伝えしました。これに関して文部科学省が初の実態調査(今年5月現在)の結果(外部のPDFにリンク)をまとめ、中教審の部会に報告しました。

12%の市町村で小中一貫教育 成果と課題、相半ば‐渡辺敦司‐


それによると、9年間を通じた教育課程を編成して系統的な教育を目指す「小中一貫教育」を実施しているのは、全市区町村の12%に当たる211自治体でした。このほか、小中「一貫」には至らないまでも、情報交換や交流を行うことを通じて小学校教育から中学校教育への円滑な接続を目指す「小中連携教育」を実施している市区町村が66%に当たる1,147自治体あります。22%に当たる385自治体は、特にこうした小中一貫・連携教育を行っていないとしています。
小中一貫教育を実施している自治体のうち半数(49%)は「市区町村全域で実施」しており、以下「市区町村の1割以下程度の学校で実施」27%、「市区町村の2~3割で実施」19%などとなっています。学校の構成は「2小学校+1中学校」39%、「1小学校+1中学校」33%、「3小学校+1中学校」20%となっていますが、これには自治体の規模や中学校区の設定によっても違いがあるものと見られます。

小中一貫教育を推進する主な狙い(複数回答)は「中1ギャップの緩和など生徒指導上の成果を上げる」(96%)、「学習指導上の成果を上げる」(95%)、「9年間を通して児童生徒を育てるという教職員の意識改革」(94%)がほとんどで、次いで「教員の指導力の向上」(79%)、「異学年児童生徒の交流の促進」(75%)、「特色ある学校づくりを進める」(73%)などとなっています。一方で実施市区町村のうち71%と多くの自治体が「学校選択制を導入していない」としており、保護者や子どもの選択幅を広げるというより、現行の学区を前提として教育の充実を目指している自治体が多いようです。

小中一貫教育を実施している小中学校1,130組のうち、施設一体型校舎は13%と少数派で、校舎が隣接しているケース(5%)を合わせても5組に1組程度。78%と大多数が従来のままの「施設分離型校舎」となっています。
こうした施設上の制約があるためか、72%と多くでは学年の区切りが「6-3」のままです。211自治体1,130組で行われているといっても、施設分離型で6・3制のままであれば、一見しても小中一貫教育が行われているとはわからないかもしれません。「4-3-2」は26%で、「5-4」「4-5」「5-2-2」「3-4-2」「2-3-4」はいずれも1%未満となっており、やはり区切りを変えるなら4-3-2制が優勢のようです。

自治体の回答を見ると、76%が「成果が認められる」とする一方、「課題が認められる」も74%と相半ばしています。学校側の回答でも同様です。中教審ではこうした結果をもとに、新たな学校制度に位置付ける意義や目的、制度上の制約などを検討することにしています。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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