『ベネッセ進学フェア2014』講演会【第3回】「2015年度入試  後悔しない受験校選び」

私学教育研究の第一人者、森上展安氏に、受験校選びの秘けつについてお話しいただきました(『Benesse進学フェア2014』講演会 2014<平成26>年5月、東京国際フォーラムより)。

<Benesse進学フェア2014 講演会(動画)>
<Benesse進学フェア2014 森上展安さん講演会(動画)>



学校の文化と家庭の価値観に差がないか

受験校を選ぶうえで、いちばん気にしてほしいのは、学校の文化と家庭の価値観との差です。特に女子の場合、「こんなはずではなかった」というケースがよくあります。携帯電話を持つことや、学校帰りの寄り道といったことに寛容な学校もあれば、そうでない学校もあります。
中学校の段階というのは、しつけをする時期です。ご家庭それぞれの考え方ですから、自由がいいと一概には言いきれません。しかし家庭の考え方と学校の考え方が違うと、子どもは言うことを聞かなくなります。

中堅校や公立の一貫校は、しつけがしっかりしている傾向があります。難関校は、そうでもありません。率直にいって、難関校は精神年齢が高い子どもが多く、あれこれうるさく言われるとかえってやる気をなくす、ということもあるでしょう。学校は、子どもを見て文化をつくっているのです。



指導力のある教員がいるか

子どもの成長は、指導者によって一瞬にして変わります。特に思春期はそうです。しかし、そのいい教員というのが本当に少なくなってきています。教員の指導力は、教員個人の資質です。独立職ですから、特に私学は公立の先生のように研修を受ける機会がないことが多いのです。個人によるところが大きいのです。中学受験でもそうですが、マニュアルどおりに解き方を解説するような先生が多いですね。「なぜこうなっているのか」ということ大事なのですが、そこを教えない先生は、教えられないんです。ちゃんと教えられるような素晴らしい先生がいたら、それは本当によい出合いです。偏差値で判断するのではなく、ぜひその学校を選んでいただきたいです。



併願校の選び方

今年の中学入試で、偏差値40代前後の学校はものすごく入りやすくなりました。来年もその傾向は続いて、さらに偏差値50くらいの学校にまで及ぶと思います。学校でいうと、早慶以上のトップ層も入ります。もし、あわよくばそういうところに、入れるかも、ということなら併願校として、本人にはその気がなくても、お尻をたたいてみてもいいと思います。
併願校を選ぶ時は、入試日程も考慮してください。3校受験するとして、初日は70~80%くらいの合格率の学校にするのが望ましいです。2日目は60%くらいの、実力相応校、チャレンジ校は最後の日にしてもらいたいです。近頃のお子さんは、少し打たれ弱くなっています。ショックを受けないように、まずは確実な学校を1つ合格させて、次に実力相応校、チャレンジ校という順番が望ましいです。



グローバルエリートをめざす

中学入試の先にある大学選びについてふれておきます。これから、グローバル大学が必要とされるようになります。必要だから国がテコ入れしています。今後、グローバル化の流れが非常に強くなります。どこで学ぶかということがすごく大事になってきます。1年なり2年なり、海外のしかるべきレベルの学生とディベートをしたり、問題意識を共有したりするような交流をすることが極めて重要になってきます。知り合いの企業の採用担当者に聞くと、「3分の1はグローバルエリートを採りたい、3分の2は従来のエリートでいい」と言います。3分の1というのは相当な数です。そういうスタンスで、親も考えていったほうがいいでしょう。

今の東京大学は、グローバル大学かというと、そうではありません。しかし教養学部についていえば、世界広しといえども、あれだけのテーマ、あれだけの先生で学べるところはほとんどないそうですから、東京大学の教養学部でまず学んで、そのあとにグローバル大学に行く、という選択もあるだろうと思います。

これからの時代は、どうやって問題を解くかということより、どういう問題があるのか、発問する能力を重視する欧米型に一層近くなります。どうやって解くかは、コンピュータをクリックすれば出てきますから、内容知や解き方についてたくさん知る必要は、重要度でいえば二の次です。問題の立て方がまちがっていれば、解決法もまちがってしまうので、発問する能力は大切です。



勉強の心構え

先日、中高一貫校で学ぶ中学1年生、中学2年生の子どもたちを面接して驚きました。たいへんしっかりしていて、中高一貫校で学ぶとこれほど変わるのかというくらい、頭の回転がよくて顔付きもよくなっていました。そういう先輩たちの事例を踏まえて、これから育っていく子どもたちに伝えたいことが2つあります。

1.昨日より今日、今日より明日、と本人がいかに成長したかを大事にしましょう。他の人と比較しないようにしましょう。
2.できることをしっかりやりましょう。

できないことはいいです。あとで自然にできてきますから。今できることをしっかりやっていれば、ある時スッと、できるようになっています。そこまでが長い人もいて、なかなか待てないかもしれませんが、必ずできるようになります。できることにじっくりと取り組んで、成功を勝ち得てほしいと思います。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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