子どもが「学校行きたくない」と言ったら、どうする?【第1回】~不登校の原因とは~

毎日元気よく学校に通っていた子どもが「学校に行きたくない」と言ったら……。東京学芸大学教育学部准教授で、同大付属の幼稚園と小・中学校でスクールカウンセラーもされている松尾直博先生に、近年課題となっている不登校に関する状況と、保護者がまずすべきことについて伺いました。



中学校ではクラスに1人が不登校

文部科学省の調査によると、病気や経済的な理由以外で学校を30日以上休んでいる不登校の子どもは小・中学生合わせて約12万人いることがわかっています。近年、その数は減っていますが、依然高止まりが続いています。
不登校の子どもの数は学年の上昇とともに増加し、特に小学6年生から中学1年生にかけて約3倍に膨れあがっています。中学校では30数人に1人、つまり1クラスに1人は不登校の生徒がいるという状態です。中学校に進学したことによる環境変化の影響、いわゆる「中1ギャップ」が背景にあると考えられます。



不登校の理由は本人にもわからない場合が多い

なぜ多くの子どもたちが学校に行けなくなってしまうのでしょうか。実は本人にもその理由がわからないことが非常に多いのです。文部科学省の調査でも、下記のような結果が出ています。

不登校となったきっかけと考えられる状況(複数回答)
1位 不安などの情緒的混乱 26.5%
2位 無気力 24.4%
3位 いじめを除く友人関係をめぐる問題 14.7%


友人関係のトラブル、学業の不振といった明確な理由を挙げる子どももいますが、明確な理由がわからなくて「なんとなく不安になり学校に行けない」という子どもたちが多いのです。さまざまなストレスが蓄積され、ちょっとしたきっかけでぐんと気持ちが落ち込んでしまうのです。特に思春期は体調の変化が大きく、ホルモンのバランスで怒りっぽくなったり、落ち込みやすかったりすることも要因の一つとして挙げられます。
また、多くの子どもたちへのカウンセリングをとおして感じているのは、周囲の期待に応えたいとがんばりすぎてしまう子が多いということです。各種統計からも、近年の子どもたちは、規範意識が強く、保護者想いで、素直で優しい子どもたちが多いことが明らかになっています。だからこそ、周囲の期待する自分と本当の自分とのギャップができ、ストレスをためてしまう子が多いのです。



まずは行きたくない気持ちを受け止めて

いきなり長期間学校を休んでしまう子どもはそう多くはありません。遅刻や早退が多くなったり、明らかな病気ではないけれど身体の不調を訴えたり、朝起きられなくなったりするなどの予兆があります。そうした段階で、子どものことを気遣ってあげることが大切です。
子どもが何かに悩んでいるのに、無理に学校に行かせてしまったことで、問題がこじれ、不登校が長期化してしまうことがあります。「いつもと様子が違うな」という場合は、少し様子をみてあげてほしいですね。その際、保護者のかたに注意してほしいのは、なぜ学校に行きたくないのか、特に本人が話したがらない場合は問い詰めないことです。子ども本人も隠しているわけでなく、自分でもわからないからです。
まずは、「行きたくない」というその子の気持ちを受け止めてあげましょう。子どもが話したいことを話させて、背景にある気持ちをゆっくり解きほぐしてあげることから始めてほしいと思います。ただ、小さい子どもはうまく言葉にできないし、思春期の子どもは保護者に素直に自分の気持ちを伝えることができないことがありますので、スクールカウンセラーに相談してみることをおすすめします。保護者自身が自分を責めて悩むのではなく、第三者の意見を取り入れ子どもの成長力・回復力を引き出しましょう。

次回は、スクールカウンセラーにお願いすべきこと、保護者ができることを具体的にお伺いします。


プロフィール


松尾直博

主な著書『絵でよくわかる こころのなぜ』(学研プラス)『ポジティブ心理学を生かした中学校学級経営 フラーリッシュ理論をベースにして』(明治図書出版・共著)『コアカリキュラムで学ぶ教育心理学』(培風館・共著)『新時代のスクールカウンセラー入門』(時事通信社)など


博士(心理学)。公認心理師。臨床心理士。学校心理士。特別支援教育士スーパーバイザー。専門は、臨床心理学や学校心理学。幼稚園、小中学校でのスクールカウンセラーの経験多数。

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