子どもを運動好きにするコツ【第2回】~実践編~

「運動はちょっと苦手」というお子さまを運動好きにするには、どうしたら良いのでしょうか? 大阪教育大の赤松喜久教授は「まず運動を楽しむことが重要」と話します。そこで、今回は子どもが楽しく実践でき、かつ運動能力を高められる運動メニューもご紹介していただきました。



子どもが運動好きになる4つのステップ

第1回でもご説明したように運動好きに育てるには、最初から速く走ることや上手にボールを投げることを目標にするのではなく、まずは楽しく運動できるようサポートしてあげることが大切です。子どもは、運動が楽しいものだと実感できれば、さらに楽しむためにはどうしたら良いか、上手な友達をまねし始め、無意識のうちに自分でいろいろな方法を工夫するようになります。


子どもが運動好きになる4つのステップ
 1:まず運動を楽しむ
 2:友達をまねる
 3:いろいろ試す
 4:自分が楽しめる方法を身につける
   →もっと楽しくなる!


実際、運動クラブの子どもたちを対象にして行ったブーメラン遊びの実験でも、大人が言葉でブーメランの使い方を指導しなくても、ブーメランを飛ばすにはどのように手を使ったら良いか、どのように足を踏み出したら良いか、子どもたちは友達のまねをしながら、身体の使い方を身につけることができました。

ただ、発達段階が上がった子どもや、運動が得意な子どもには、「もっと……すると良いよ」という声かけも有効になっていきます。言葉で指導する際は、「それでは速く走れないよ」などと否定的な言葉をかけるのではなく、もっと楽しむにはどうしたら良いかという視点を大切にしてあげると良いですね。



自分の体を動かす感覚をつかもう

運動を楽しめるようになると、「より速く走りたい」といった意欲も高まってくると思います。技術的に運動能力をアップさせるためには、自分の身体を動かす感覚を身につけさせることが重要です。身体のどの部分をどのように動かしたら速く走れるのか、高く飛べるのか、うまく回れるのかという自分の身体を動かす感覚を磨く練習が効果的です。幼児からできる簡単な練習方法をご紹介します。

【幼児からできる運動能力の鍛え方】

◎走る力を鍛えよう
速く走るためには、地面を蹴ったときに得られる大きな反発エネルギーを利用し、前に進むための力を得ることが必要です。その力を最大限得られるよう、前かがみになったり、のけぞったりせず、姿勢良く走るようにしましょう。
姿勢良く走るために大切なのは、バランス感覚を磨くことです。片足で5秒間静止できるようにするだけでも、良い練習になります。これができたら次のステップとして、地面についていないほうの足でひらがなを書いてみましょう。保護者がその文字を当ててあげると、ゲーム感覚で体のバランスが鍛えられます。

◎投げる力を鍛えよう
ドッジボールや野球のボールを上手に投げるには、手だけでなく体全体を使ってボールを投げさせることが大切です。その練習にぴったりなのがブーメランです。ブーメラン自体はとても軽く幼児でも投げられるため、楽しみながら練習できます。ブーメランは100円均一ショップで売っていたり、牛乳パックでも簡単に作れたりするので、家庭でも楽しんでみてくださいね。
(※ブーメラン遊びをする際は、十分周りに注意しましょう)

◎回る力を伸ばすために大切なこと
前転や後転ができるようになるには、背中をしっかりと丸めることが大切です。その動きを子どもに身につけさせるために有効なのが「ゆりかご」という運動です。ひざをかかえて座り、後ろや前に転がるのです。この動きを練習すると自然に体が丸められるようになり、スムーズな前転・後転ができるようになります。



運動能力は、ほめて伸ばして!

練習してもなかなか上手にならないと、「どうせわたしは足が遅いから……」「わたしは外で走るより家の中にいたい」と保護者に弱音をはくこともありますよね。そのような言葉や態度をそのまま受け止めるだけだと、ますます運動嫌いになってしまう可能性があります。たとえ上手にできなくても、ちょっとした変化を認めて、ほめてあげることが大切です。
たとえば、逆上がりができない子なら、「今日は昨日よりちょっと足が上がったね」という具合です。運動能力の発達のピーク「ゴールデンエージ」はあっという間です。少しずつ運動が好きになれるように、サポートしてあげてほしいと思います。

保護者の中には、「自分が運動は苦手だから」と心配しているかたも多いと思いますが、保護者が苦手でも大丈夫です。わたしの知り合いにも、運動な苦手な小学校の先生がいますが、とても優秀な先生ばかりです。できない子の気持ちがわかるからです。ご自身が見本をみせられなくても、子どもの気持ちに共感してあげればOKです。きっと友達や学校の先生がサポートしてくれます。

暖かくなってきましたから、ぜひお子さまと屋外で運動遊びを楽しんでほしいですね。


プロフィール


赤松喜久

大阪教育大学教育学部保健体育講座教授。専門分野は、体育・スポーツ経営学、身体教育学。大阪教育大スポーツクラブ(陸上部)の監督として、子ども陸上教室を開催し、地域の子どもたちの運動能力向上のために取り組んでいる。

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