「認知行動療法」の考え方を取り入れると、子育てが楽になる!【前編】

子育てに不安やストレスはつき物です。子どもが言うことを聞いてくれずにイライラしたり、思い通りの育児ができずに自信を失ったりすることは誰にでもあるでしょう。そんなときに気持ちを切り替えたり、子どもの望ましい行動を増やしたりするために参考になるのが「認知行動療法」の考え方です。子育てに認知行動療法を取り入れることを提唱する桜美林大学心理・教育学系講師の小関俊祐先生にお話を聞きました。

「きっかけ」を変えることで、「行動」は変えられる!

子育てに不安やストレスを感じたとき、すぐに気持ちを切り替えられるといいのですが、そうすることが難しく、ネガティブな気持ちになってしまうことがあります。そうなると、前向きな気持ちで育児ができず、ますます不安やストレスが大きくなるという悪循環に陥ってしまうかもしれません。

私の専門である「認知行動療法」は、うつ病や不安症の治療に用いられる心理療法ですが、その考え方は育児にも応用でき、子育て中の保護者のかた向けに研修会も実施しています。育児にどう役立つかというと、子どもや保護者のかたの思考や行動の選択肢を増やし、より良い結果につながる思考や行動のパターンに気づくことで、望ましい結果につながる経験を増やしていくことができるのです。特に、冒頭で述べたようにマイナス思考に陥りやすい保護者のかたは有益なヒントを得られるに違いありません。

ここで認知行動療法の基本的な考え方を説明しましょう。普通、人は、自分の行動を「自分で決めている」と思っていますよね。ところが、実は、自分の意思だけではなく、さまざまな「きっかけ」の影響を受けて行動は選択されています。そこで、「きっかけ」を変えることで、望ましい行動を増やしていこうというのが、認知行動療法の考え方のひとつになっています。

駄々をこねる子どもにはどんな対応がベター?

少し具体的に説明しましょう。子どもがおもちゃ屋さんの前で、「あれを買って!」と駄々をこねているシーンを思い浮かべてください。保護者のかたはなだめますが、結局、根負けして買ってしまいました。この流れを【きっかけ】【行動】【結果】という3つの枠組みで捉えてみます。

【きっかけ】おもちゃ屋さんの前を通った
【行動】大声で叫んだ
【結果】買ってもらえた

泣き叫ぶ子どもをなだめるのは、かなり大変です。それよりも、【きっかけ】を取り除くことで、その行動を起こりにくくするほうが簡単です。例えば、「おもちゃ屋さんの前を通らない」「あらかじめベビーカーにお気に入りのぬいぐるみをつけておく」などが、きっかけを変える方法として考えられます。そうすることで、【行動】が変わるわけです。

また、根負けして買い与えた場合、今後、子どもは同じような場面で駄々をこねるようになりかねませんから、あまりよい対応とは言えません。しかし、望ましくない行動が起こってしまったあとでも、【結果】に対して保護者のかたの対応を変えれば、次回の行動が変わるかもしれません。例えば、叫び疲れるなどして、子どもが落ち着いた瞬間、「がまんできたね! えらかったね~」などと褒め、「がまんするといいことがあるぞ」と子ども自身に気づかせる対応が考えられるでしょう。

「望ましい行動」を増やせば、「望ましくない行動」が減る

以上は、【きっかけ】や【結果】を操作し、「望ましくない行動」を減らした例です。同じようにして「望ましい行動」を増やすことが可能です。

例えば、子どもがなかなか勉強しない場合、普段、どのような状況になると勉強に向かいやすくなるかを振り返ってください。そして勉強という【行動】につながる【きっかけ】を意図的につくります。

・弟とつい遊んでしまって勉強に身が入らない
⇒弟がお風呂に入っているときに勉強を促してみる

・保護者のかたが隣に座ってわからない箇所を教えると喜ぶ
⇒「今なら勉強を教えてあげるよ」と声をかける

さらに、勉強したという【行動】に対し、「やってよかった」と思えることを提示します。例えば、たくさん褒めることなどが考えられるでしょう。褒めるという行動は、「それでいいんだよ」「その調子!」「ちゃんと見てるよ」などと、さまざまなメッセージを含んでいます。このようにして望ましい行動を増やすことで、自然と望ましくない行動は減っていきます。

後編では、認知行動療法により、感情や気持ちを整理する方法を説明します。

プロフィール


小関俊祐

桜美林大学心理・教育学系講師。臨床心理士、専門行動療法士、指導健康心理士。専門は、認知行動療法。愛知教育大学学校教育講座講師などを経て、現職。認知行動療法の観点から教育プログラムの構築や子育て支援のあり方を研究している。

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