「認知行動療法」の考え方を取り入れると、子育てが楽になる!【後編】

同じできごとに対して、気持ちが落ち込む人もいれば、気にせずにあっけらかんとしている人もいます。それは「性格」であり、変わらないものなのでしょうか。認知行動療法では、できごとの受け取り方を意識的に変えることで、「感情」を前向きなものへと変えていきます。引き続き、桜美林大学の小関先生にお話をうかがいます。

気持ちが落ち込みやすい保護者はこんなふうに考えよう!

前編では、環境を変えることで、子どもの行動を変える方法をご紹介しました。認知行動療法は、人の行動だけではなく、認知面にもアプローチすることができます。子どもがなかなか言うことを聞いてくれなくて落ち込んでしまいやすい保護者のかたを例に出して考えてみましょう。

認知面の場合は、【できごと】【認知や思考】【感情】の3つの枠組みで捉えるとわかりやすくなります。

【できごと】子どもが言うことを聞かない
【認知や思考】自分は子育てが下手だ
【感情】落ち込む

【できごと】と【感情】の間に、【認知や思考】があることに着目してください。多くの人は、【できごと】の結果として自動的に【感情】が生まれると考えています。「友人から嫌なことを言われた」結果として、「悲しい気持ちになった」といったようにです。

しかし、本当にそうでしょうか。たとえ嫌なことを言われても、「あの人の言うことは的外れだから気にしない」「他の友人は否定してくれるはずだ」などと考えたとしたら、悲しい気持ちにはならないでしょう。このように、【できごと】に対する【認知や思考】の多様性(さまざまな選択肢)に気づくことで、少し楽な【感情】に気づくこともできるのです。

例えば、最初の例で、次のような【認知や思考】を選択したとしましょう。
・今日は言うことを聞いてくれなかったが、聞いてくれる日もある
・今日はうまくいかなかったが、それだけで子育てが下手とは言い切れない
・子育ては初めてだからうまくいかなくても仕方ない。徐々にうまくなればいい

すると、【感情】は、次のような前向きなものに変わるでしょう。
・「明日もがんばろう」という気持ちになる
・失敗したことに対し、「まあいいか」と思える
・毎日がんばっている自分を褒めたい気持ちになる

このようにさまざまな【認知や思考】の多様性(選択肢)に気づくことができると、それに伴って【感情】も変化して、落ち込むことは減っていく可能性があります。「自分の認知や思考を自在に変えることなんて可能なの?」と思うかたもいるかもしれませんが、少し立ち止まって、思考や認知に注意を向けることに慣れていけば、徐々にできるようになっていくはずです。実際、こうした認知行動療法の手法は、うつ病などの治療に広く用いられているのです。

自分の内面を見つめ直して感情をコントロールする

それでは、どのように【認知や思考】を変えていくとよいのでしょうか。何らかのできごとに対し、不安やストレスを感じるなどネガティブな気持ちになったとき、【認知や思考】を振り返ってみてください。「自分はこう考えたけど、それは決めつけかもしれない。他にどのように考えられる可能性があるだろうか」と、思考の幅を広げていきます。

少し練習してみましょう。3歳の子どもが片付けないことにイライラしてしまいました。このときの【認知や思考】が次のようなものだったとしましょう。

【できごと】子どもが片付けない
【認知や思考】何度も言っているのだから、いい加減に片付けられるようになってほしい
【感情】イライラとする(さらにイライラしている自分が嫌になる)

このケースでは、【認知や思考】をどう変えることができるか、考えてみてください。

・まだ3歳だから、片付けられないのは仕方ない
・たまに片付けられることもあるし、調子のいいときに積極的に声をかけてみよう
・どうすれば片付けられるようになるか、園の先生にも聞いてみよう

このように考えたら、少しイライラの気持ちは和らぎますよね。ただ、イライラが止まらなかったり、ひどく落ち込んでいたりする場合、冷静になって自分の内面を分析するのは難しいかもしれません。そんなときは、家族や友人など信頼できる人に相談するのがおすすめです。「こんな考え方もあるんじゃない?」などと、きっと視野を広げてくれるはずです。また、「友人が同じ状況で悩んでいたら、どんなアドバイスをするか」と、客観的に捉えることで、他の選択肢に気づきやすくなることもあります。

人には考え方のクセのようなものがありますから、すぐに【認知や思考】が前向きに変わるわけではありません。しかし、ネガティブな気持ちになったときに振り返って整理するうちに、しだいに考え方に柔軟性が生じて前向きに考えられるようになるでしょう。そのようにして気持ちに余裕ができると、子どもにも好影響が及ぼされます。ぜひ子育ての場面でも、認知行動療法の考え方を意識して活用していただければと思います。

プロフィール

小関俊祐

小関俊祐

桜美林大学心理・教育学系講師。臨床心理士、専門行動療法士、指導健康心理士。専門は、認知行動療法。愛知教育大学学校教育講座講師などを経て、現職。認知行動療法の観点から教育プログラムの構築や子育て支援のあり方を研究している。

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